パナホームは、室内の空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の濃度の基準を定めた国際認証「グリーンガード認証」を住宅としては世界で初めて取得した。シックハウス症候群の原因となる揮発性有機化合物300種類を対象に使用する数十種類の建材や接着剤を見直した。コストは「売り値には影響しない範囲」(パナホーム)としている。
パナホームは2016年4月4日、東京都内で会見を開き、室内の空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の濃度の基準を定めた国際認証「グリーンガード認証」を住宅としては世界で初めて取得したと発表した。グリーンガード認証に基づいて、頭痛や呼吸器疾患を引き起こすシックハウス症候群の原因となる揮発性有機化合物300種類を測定対象とし、使用する数十種類の建材や接着剤を見直すとともに、家全体での揮発性有機化合物の濃度を検証した。建材や接着剤を切り替えたコストは「売り値には影響しない範囲に収まった」(パナホーム)としている。2016年4月5日から発売する戸建て住宅「CASART(カサート)」に加え、その他の商品ラインアップも、グリーンガード認証に対応した部材や設計仕様に切り替えていく。
人間が一日を過ごすのは住宅を含め室内が90%を占める。住宅は高断熱/高気密化が進んでおり、揮発性有機化合物など有害物質の濃度が屋外の2〜10倍まで高くなる。また、ぜんそくにかかる子供は、過去20年で1.6倍にも増加しているという。
揮発性有機化合物は、建材や接着剤、家具などから放出される物質で、シックハウス症候群の原因となる。その一方で、世界で商業的に使用される化学物質は14万種類、住宅内で使用される化学物質は1万7000種類に上り、毎年1500種類が新たに製品化されている。
現在、日本では有害性が明らかになった揮発性有機化合物の基準値を定めているが、対象となるのは室内に放出されうる揮発性有機化合物のうち、わずかな種類に限られている。厚生労働省は、ホルムアルデヒド/アセトアルデヒド/トルエン/キシレン/エチルベンゼン/スチレン/パラジクロロベンゼン/テトラデカン/クロルピリホス/フェノブカルブ/ダイアジノン/フタル酸ジ-n-ブチル/フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの13種類について指針値を定めている。また、国土交通省はこの13種類のうちホルムアルデヒドなど5種類について濃度の上限を設けている。
これらの規制対象の揮発性有機化合物を含む建材や接着剤は減少傾向にあるものの、代替品で規制対象外の揮発性有機化合物が発生してしまうため、シックハウス症候群の根本的な解決には至っていない。また、日本には揮発性有機化合物の総量を対象とした規制はないのが現状だ。
海外は揮発性有機化合物の総量規制があるが、揮発性有機化合物の濃度に関する規制で対象とする物質の種類が日本同様に少ない。フランスで8種類、韓国で11種類にとどまる。例外なのが米国の第三者安全科学機関、ULが定めるグリーンガード認証だ。
グリーンガード認証は、室内の空気の質を認証するプログラムとして2001年にスタートした。揮発性有機化合物300種類以上に対して基準値を設定しており、総量も500μg/m3に制限している。揮発性有機化合物は、一定以上の面積の建材や接着剤を密閉空間に設置して測定する。また、室内に1日測定器を設置する形で、部屋全体の揮発性有機化合物の濃度についても調査を行う。
グリーンガード認証のような厳しい基準が米国で浸透した背景には、空気を含めた室内環境に対する要求の高さがある。また、政府が規制を主導せず民間企業に自立した行動を促しているため、民間企業は消費者に選ばれるために積極的により厳しい認証の取得に取り組むという。
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