設計・解析の現場でも、デスクトップ仮想化の一方式であるVDIに対する関心が高まっている。連載「CAD/CAE環境をVDIへ移行するための 手引き」では、VDIの基礎解説や導入メリット、運用ポイントなどを分かりやすく解説していく。
近年、「デスクトップ仮想化」を設計・解析の現場へ導入する機運が高まっている。これまで、一般事務業務を目的とした導入は進んでいたが、グラフィックス仮想化技術の進歩により従来のデスクトップ仮想化が苦手としてきた3次元CADアプリケーションへの対応を果たし、その適応領域を拡大している。さらに、設計・解析の精緻化と効率化を目指したCAD、CAE、PLM/PDMをはじめとするデジタルエンジニアリングシステム集約化の流れが、設計・解析現場へのデスクトップ仮想化導入を後押ししている。
CAD、CAE環境におけるワークステーションの維持・管理は、ユーザー部門のITに比較的詳しいユーザーが本業の傍ら行っているケースを多く見掛ける。デスクトップ仮想化の導入後はCAD、CAE環境のハードウェア/ソフトウェア/データの全てがデータセンターやクラウドに集約される。この集約により、牧歌的だったワークステーションベースのシステムがミッションクリティカルなシステムへと変ぼうを遂げる。さらにシステム管理の主体が情報システム部門に移管される。従って、デスクトップ仮想化の導入のためには、十分な事前準備が必要であることを強調したい。
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ユーザー部門が求めるデジタルエンジニアリング環境を情報システム部門が理解し、情報システム部門の運用能力をユーザー部門が理解することも重要である。このため検討に際してはユーザー部門と情報システム部門の二人三脚で進めることが必要不可欠である。ぜひそれぞれの立場の方に本稿をお読みいただきたい。
本連載ではCAD、CAE環境のデスクトップ仮想化について、導入のメリット・導入の流れ・ポイントを5回に分けて説明する予定である。
デスクトップ仮想化の説明に入る前に、まず「仮想化」について考えてみよう。仮想化とは一言でいうと、「要素ごとの物理的な結び付きをなくし、論理的な分割・統合を可能にする技術」である。IT分野で最もメジャーなサーバ仮想化の場合、ソフトウェアとハードウェアの結び付きをなくし、どのようなサーバインフラでもサービスの提供を可能にする技術である。デスクトップ仮想化も要素技術はサーバ仮想化と同様であり、デスクトップを実現するソフトウェア(OS − アプリケーション − データ)と手元のハードウェア(端末)の結び付きをなくすものである。
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