3Dデータといえば、3D CADや3D CGの話になりますね。そういう意味では、2015年は少し時代が動いたように思います。3Dプリンタブームとタイミングを同じくして、無償3D CADや安価な3D CADに注目が集まっていました。ただ、初心者が比較的取り組みやすい一方で、業務で使用するには機能が物足りないというのが現状でした。実際私も初心者向けのコンテンツ作成には123D Designを使う一方で、業務は当然のようにInventorやSolidWorks、あるいはRhinocerosを使用しています。
そこに一石を投じているのが、OnshapeやFusion360といえます。特に、Fusion360は、2015年になってから少しずつ注目が集まってきました。その能力の高さに対して、現在のところ実質無償で使用できるということも要因として間違いなくあるでしょう。何しろFusion360について語られる際、まくら言葉のように「実質無償」が付いていることが多いように思っています。
Fusion360について、純粋に設計業務という観点からいくと、従来のデスクトップのメカCADにはまだまだ機能的に及ばない一方で、有機的な形状が作成しやすいなど優れた特長も備えています。
当然ながら、オートデスクも営利企業であり、最終的には、あるエコシステムの一環としてFusion360が位置付けられ、ライセンス体系が確立していくのだと思いますが、今はこのCADをもって市場を変えていくことを試みているのではないでしょうか。いずれにしても、その存在が「CAD=高価なもの」という認識を変えつつあるように思っています。
そしてもう1つが、マンスリーサブスクリプションの本格的な登場でしょうか。これについては以前も本連載で触れましたが、10年以上前に私がシンクスリーにいた時、thinkdesign+thinkshape(当時の名称)が従来の永久ライセンス+保守から、マンスリーサブスクリプションに本格的に切り替えました。結果的にそれが定着したのかといえば、当事者としてもやはり疑問が残りました。当時のメカCADの業界にとって、時期尚早だったのかもしれません。
しかし、オートデスクだけではなく、シーメンスPLMソフトウェアもしばらく前からSolidEdgeで月極めの支払いで使用できます。オートデスクに至っては現在、ほとんどの製品が永久ライセンスで買えません。私が現在持っているProduct Design Suiteは引き続き、永久ライセンス+メンテナンスサブスクリプションという形で買いましたが、また新たにライセンスを追加したければ、月額でということになります。
もはや、世の中のものの多くが、フリーミアムな形で試してから必要な場合には、月額で契約して「必要な時に必要なだけ使う」という形になってきています。世の中の人たちも徐々にそのような形に慣れてきていると思います。
永久ライセンス+保守という形に慣れていると、期間限定で所有せずに「必要な時に必要なだけ使う」というやり方に抵抗感を示す方もそれなりにいらっしゃるようです。しかし私の場合、かなりウェルカムです。どっちみちソフトウェアは更新していかないといけないものですから、常に最新版を使えるのはうれしいですし、私の場合は仕事の相手に合わせてCADを使うこともありますので、本当に必要なときに必要な期間だけ使うことができるのはありがたい話です。
それに伴い、ツールのクラウド化もどんどん進むのではと考えています。Fusion360は、データ自体はクラウド上に、アプリケーション自体にはローカルにありますが、Onshapeに至ってはローカルには何もなくWebブラウザだけで操作できます。それにも関わらず、パフォーマンスについては、私が期待した以上にレスポンスがよいように感じました。
こうなってくると、今後は永久ライセンスの存在はあまり意味がなくなるでしょうし、月額で契約する方が自然に思えてくるでしょう。
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