倒産寸前の大ピンチからV字回復、ICT活用で復活した紳士服メーカーの戦略イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(6)(5/6 ページ)

» 2016年02月26日 07時00分 公開
[松永弥生MONOist]

卸売りを減らして利益率をアップ

 他社の工場は人材不足もあってどんどん閉鎖されている。その影響もあり、同社には「これまで使っていた縫製工場がなくなったから、受けてください」と、日本全国から仕事が集まっているという。

 川辺社長は、存亡の危機にあった家業の縫製工場を引き継ぎ、製造卸から製造小売に業態を転換し生き残りに成功した。

 今では、楽天市場店に2店舗、Amazon店、独自ドメインの本店と合計4店舗のネット店舗を運営。販売店は、大阪梅田茶屋町店、東京南青山店の2店舗、そして服のリフォームショップ「谷町ヌーボ」も運営している。自社の直営小売店を増やして、卸売りを減らした結果、利益率は格段にアップした。

 以前は、人を大勢雇い出荷作業にも追われた。仕事が忙しくても利益率が低いから、お金が残らなかった。「今の方が作業量が少ないんです。製品を1着1着大切に扱って、利益が残ります」と、川辺社長は楽しそうに作業場を見渡す。

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クラウドファンディングで地元大阪を元気に

 新しいものを果敢に取り入れていくのは、川辺社長の持って生まれた性格だという。

 事業資金調達のためにクラウドファンディングにもいち早くチャレンジしている。投資型のクラウドファンディングで、服のお直し「谷町ヌーボ」中崎町店の開店費用を集めたのが最初だ。これまで1年半で7回のクラウドファンディングを行い、総額2000万円以上を集めたそうだ。

 川辺社長が家業をついだばかりの頃、経営は苦しく従業員が辞めていき、仕入れ先も生地を売ってくれなかった時期があった。そんなときに現金ではなく、売り掛けで取引を続けてくれる会社があった。そんな大阪らしい人情に支えられて、事業が継続してきたという思いは、今も持っている。

 「いつか大阪に、恩返しをしたい」と考えていた川辺社長は、クラウドファンディングの可能性と面白さに気付き、地域密着型クラウドファンディング「Faavo大阪」のオーナーになった。

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