同社が作成している「技術相関曼荼羅(まんだら)」は、新規事業の事業領域としてどの方向に可能性があるかを探るものだ。コア技術を核に派生技術とその周辺、また隣接技術を結ぶとどういう技術や価値が創造できるかというのを模索する(図2)。「新たな技術や価値は、過去の技術の間に存在することが多い。これらを結び付けたところに何があるのかを考えていく」と腰塚氏は述べている。
さらに、これらで得た技術的なシーズをベースに、新規事業化に向けては、以下の3つの点とそれをブレイクダウンしたそれぞれ2つの視点で精査を進めていく。
まず「顧客に刺さる」という点では、社会が抱える課題の解決策となったり、世界的な潮流に合っているのかという点と、技術的な優位性により顧客の要望を満たせるかという点を見る。具体的に起こり得る社会の変化や世界の潮流を挙げており、これに対して新規事業は合っているのかどうかというのを確認する。また、技術面ではビジネスイノベーションセンターにより、オープンイノベーションを進めており、新たな技術の取り込みなどを進める一方で、顧客企業との連携を進めて、価値を探っているという。
「他社に勝てる」という点では、製品力だけでなく事業の運営手法や位置付けを模索する。開発統括部として、ポートフォリオ戦略やコアコンピタンス、顧客重要度などから、まず「マクロドメイン」を設定。その中で「市場の変局点にあるか」「市場の成長性はどうか」「適社性はあるか(自社に合うか)」「事業の競争環境は適正か」を見据えて、ミクロドメインを設定する。また、これらの中でクローズにする部分とオープンにする部分を判断し、ビジネス設計を行う。
「自社がもうかる」で挙がっている「サービスドミナントロジックビジネスモデル」と「マスカスタム設計」については、現在、第4次産業革命や製造業のサービス化などで語られる領域である。IoT(モノのインターネット)などを活用することにより、常に製品のデータを取得でき顧客と関連性を持つことができるようになるため、製品をモノとして提供するのではなく、サービスとして提供するということができる。またサイバーフィジカルシステム(CPS)といわれるように、フィジカル(物理世界)のデータをサイバー環境(仮想空間)に取り込み、コンピュータによる分析の結果をフィジカル環境にフィードバックして最適な効果を得るというようなことも可能となる。そのためモノとサービスを一体として考えて、顧客と一体でビジネスモデルの設計を進めていく必要がある。
コニカミノルタでは、これらの新しいサービスビジネスを「KM−CPS」として独自に定義立ててビジネス化を推進している。腰塚氏は「これからのビジネスにおいてCPSは欠かせないものとなる。CPS型のビジネスモデルでなければ新規事業としないというわけではないが、新たな価値のツールとして提案を進めていく」と述べている。
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