「TPMは車載セキュリティに機能不足」、ジェムアルトがEAL5+の独自チップ提案車載セキュリティ(1/2 ページ)

デジタルセキュリティベンダーのジェムアルトが、コモンクライテリアでEAL5+を達成した独自開発のセキュリティチップ「M2Mセキュアエレメント」を車載セキュリティ向けに提案している。PC向けのセキュリティチップであるTPMが車載セキュリティにも拡張されつつあるが、「TPMでは車載セキュリティを満足させられない」(同社)という。

» 2015年11月30日 11時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 オランダに本拠を置くデジタルセキュリティベンダーのGemalto(ジェムアルト)。売上高は25億ユーロ、従業員数は1万4000人。同社のセキュリティソリューションのユーザーは全世界で20億人にものぼる。

 電子マネーや電子パスポートに使うICカード、携帯電話通信の加入者を特定するSIMカードの大手企業であり、日本の国内通信キャリア3社のSIMカードはジェムアルト製だ。

 ICカードやSIMカードのようなエッジデバイスで強みを持っていた同社だが、2015年1月にクラウドやデータセンターなどバックエンドセキュリティの有力企業であるSafenet(セーフネット)を買収した。これにより、組み込み機器レベルの「エッジ」から、クラウドなどのプラットフォームレベルの「コア」まで、総合的にセキュリティを提供できる企業として立ち位置を明確化した。

「エッジ」から「コア」まで総合的にセキュリティを提供するジェムアルト 「エッジ」から「コア」まで総合的にセキュリティを提供するジェムアルト(クリックで拡大) 出典:ジェムアルト

日本のM2M/IoTビジネスで重視する自動車市場

ジェムアルトのManoj Kumar Rai氏 ジェムアルトのManoj Kumar Rai氏

 ジェムアルトが現在注力している事業分野の1つがM2M(Machine to Machine)/IoT(モノのインターネット)で、6つの製品/ソリューションを展開している。M2MやIoTのエッジデバイスに組み込む無線通信モジュールの他、それらエッジデバイスにとってのSIMカードに当たるMIM(Machine Identification Module)、遠隔でソフトウェア更新を行うオンデマンドのコネクティビティ、M2M/IoTのアプリケーションをソフトウェア管理するためのクラウドプラットフォーム、MIMを管理するためのサービス、そしてエッジからコアまでをカバーする「エンドツーエンドセキュリティ」だ。

 ジェムアルトの南アジア&日本のM2M/IoTビジネスを統括するManoj Kumar Rai氏は「当社は、ビッグデータの分析を除けば、M2M/IoT分野のバリューチェーンを網羅している」と強調する。対象市場も、高度なセキュリティが求められている自動車やエネルギーから、ホームオートメーションや産業オートメーション、そして民生機器に至るまで幅広い。

ジェムアルトがM2M/IoTビジネスで展開する6つの製品/ソリューション ジェムアルトがM2M/IoTビジネスで展開する6つの製品/ソリューション(クリックで拡大) 出典:ジェムアルト

 Rai氏が、日本市場におけるM2M/IoTビジネスで今後力を入れて行きたいとするのが自動車市場である。通信接続される自動車=コネクテッドカーが当たり前になり、それら通信の活用が前提となる自動運転技術の開発も加速する中で、車載セキュリティが注目を集めている。エッジからコアまでのセキュリティ提供をうたうジェムアルトは、急激な市場拡大が見込まれる車載セキュリティを重視しており、有力な自動車メーカーやティア1サプライヤが本拠を構える日本市場での提案活動を強化したい考えだ。

 Rai氏は「2015年7月に発覚したFiat Chrysler Automobiles(FCA)の車載情報機器『Uconnect』へのハッキングの事例(関連記事:クライスラーの車載情報機器「Uconnect」に脆弱性、「不正侵入の報告ない」)は、最終的に140万台ものリコールにつながった。ハッカーイベントのBlackHat/DEFCONで語られている通り『ハッキングできるものは必ずハックされる』だろう」と指摘する。さらに、中国では実装済みプリント基板をリバースエンジニアリングするサービスなどを例に挙げ、「こういったものを活用すれば、ハッキングはより容易になる。だからこそ、デバイス、サービスなどのトランザクション、データそれぞれにセキュリティが必要になる」(同氏)という。

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