1996年にPC用にマウスやキーボード、プリンタ/スキャナなど比較的低速デバイスを接続する規格としてUSB(Universal Serial Bus) 1.0が制定されました。
転送速度はLow Speedの1.5MbpsとFull Speedの12Mbpsの2つがあります。
特徴としては、PC側からマウス回路に必要な電力を供給できるように、データだけでなく電力供給用のピンを備えていることです(図3)。
一般に使われるPCでの利用を考えて、運用の簡便さのため、電源を入れたままで、コネクタの抜き差しができるホットプラグに対応しています。また、ハブを使って1つのUSBを分岐させ、最大1つのUSBポートに127までの装置を接続することができます(図4)。
その後、1998年にUSB 1.1というマイナーなバージョンアップがされました。さらにその後の2000年にはUSB 2.0が規定され、転送速度が480Mbpsになり、外付けディスク装置など、高速デバイスが接続できるようになりました。
特に、不揮発性メモリを使ったUSBメモリはその手軽さのため、一気に普及しました(図5)。
技術的には差動信号や8ビット―10ビット変換など、2000年前後に規格化されたPCI Expressを始めとする高速シリアル転送方式と同様の基礎技術を使っています。
しかし、転送速度が遅いので、エンファシス(デエンファシス)(図6)などの損失を考慮した波形整形技術は使っていません。
2008年にはクロックが2.5GHz (5GT/s)で転送速度が5Gbps(8ビット―10ビット変換のためデータ転送速度は4Gbit/s)のUSB 3.0規格が制定されました。
この規格では、物理的電気仕様は2006年に先行して制定されていた PCI Express 2.0の規格と同じです。
480M bpsから5G bpsへと一挙に10倍以上の伝送速度となったため、これまでのコネクタやケーブルではデータ伝送が困難になりました。また、USB 3.0では2レーンの伝送線路をサポートするようになりました。
このように仕様が変わったりピン数が変わりながら、これまでのUSB 1.0 や2.0対応の危機にも対応する互換性を維持するため、USB 3.0 対応コネクタは、USB 2.0コネクタと新しいUSB 3.0コネクタを並べて1つにした形状になっています(図7)。
USB 3.0を使わない場合には、これまでのUSB 2.0対応ケーブルを使うことができるようになっています。
このため、データの実効転送速度は3.0の2倍以上で、ほぼ10Gbpsとなりました。
2013年にクロックが倍の5GHz(10GT/s)のUSB 3.1が制定されました。
USB 3.1では8ビット―10ビット変換に代わり、128ビット―132ビット変換としました。
しかし、最大ケーブル長は3mから1mに短縮されました。
これは2010年に先行して発表されたPCI Express 3.0 の4GHz (8 GT/s)より高速で、2011年にIntelとAppleが発表したThounderbolt規格と同じ速度です(ThounderboltはUSB 3.1の2カ月前に倍速(20 Gbps)のThounderbole 2を発表しました)。
USBの高速化への流れは、1.0、2.0、3.0、3.1と順次高速化が図られ、ついに3.1ではPCI Expressの1レーンあたりの転送速度より高速になりました。
USBにはこの高速化の流れとは別に電力供給能力の大電力化の流れがあります。当初は、マウスやキーボードなどの低消費電力への供給を考え、プリンタやスキャナーなどは、それ自身が電源接続をもつことを考えていました。このため、給電能力はUSB 1.0からUSB 2.0までは、最大2.5Wとなっています。
その後、スマートフォンにUSBが標準的に使用され、スマートフォンの充電端子として、USBが利用されることになりました(図8)。
スマートフォンのバッテリーは大容量化され、このバッテリーに高速で充電するためにUSBの給電能力を高くする要求が出てきました。また、USBが高速化したため、ディスクやディスプレイ装置の接続にも使えるようになりました。ポータブル・ディスクやスキャナなどは、ACケーブルやバッテリーなしに、USB給電を利用すると便利なのですが、2.5Wの給電能力では、これらの装置を駆動できません。このため、USB 3.0では給電能力が4.5Wになり、さらに3.1では5.0Wに向上しました。
しかし、USBの競合規格として現れたThanderbolt規格では、USBより高速な伝送速度ばかりでなく、実に10Wの給電能力をもっています。
このため、USBで大きな給電能力をもたすことを目的として、USB 2.0の給電能力を7.5Wに上げたUSB BC規格が作られました。
さらに2012年には給電能力を100Wにした、USB PD規格が制定されました。
データ転送速度はUSB 2.0の480Mbpsと変わらず、給電能力だけを向上させた規格です。
このようにUSB規格は高速化の流れと高給電能力の流れが混在して、多少、混乱が生じています。
図9と表2にUSB規格の流れを示します。
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