一般的に中小企業では、プロジェクトの3要素「人・モノ・金」には大手企業に比べて制約があります。何でもできるわけではないし、同時に全てを開始することもできません。また、立ち上げたシステムがうまくいかなかったからといって、その仕組みを簡単に廃止するようなことはできません。
全体最適を検討し、それを構成する部分最適を行い、小さな成功体験を得て、次の課題に取り組むという姿勢が必要です。そうしていけば、経営層からの評価と次のプロジェクトへの理解、また設備投資も可能となっていくことでしょう。
私の場合も、詳細設計工程における設計審査であるDRで3Dデータを見るべきだと検討した流れでした。3D活用検討という全体最適の中で、「3DデータによるDRの実施」という部分最適への詳細検討作業に移っていっていきました。
3DによるDRのポイントは「視認性向上によるレビューの精度向上」でしたが、「レビュー内容を3Dモデルに書き込みたい」というポイントが重要だと考えています。テキストのみで表された情報とモデルにリンクした情報とどちらが情報量が豊富かといえば、当然後者になります。また3Dモデルへ直接記入する、あるいは3Dモデルからスナップショットを作成して指摘箇所を示しておけば、誰が見ても理解できるものとなります。
DRで用いる3Dモデルの階層構成やパーツがそのままのツリー構成で見えることも重要です。アセンブリやサブアセンブリ単位、またはパーツ単体での表示が、そのツリー構成と名前を見ながらコントロールできれば非常に良いですね。これらのツールとしては、3DビュワーといわれるCADにアドインされた無償のアプリケーションや、高度な編集機能を持った有償のものがあります。
「PCのスペックの制限で3D CADの大規模アセンブリが表示できない」「タブレットなどのモバイル端末で表示をしたい」「取り扱い説明書やアニメーションによる組み立て作業指示書などを作成したい」という場合、とても有効なツールもあります。ただこれらは、ネイティブな3D CADデータではなく、ビュワー用のフォーマットに変換する必要性があります。ネイティブデータは3D CADですので、それを変換さえすれば何度でもビュワーデータは作成可能です。問題があるとすれば、3D CADデータが更新された際の連携の部分でしょう。「どのタイミングでビュワーデータを作成するのか」「版管理は必要なのか否か」「見せ方や他のシステムとの連携」など検討が必要となります。
私が携わる産業機械の場合は、出図後の設計変更がよくあります。PDMシステムとの連携でチェックイン(データをサーバに保存する行為)と連携して変換をすることも検討しました。ただ、あるビュワーシステムの場合、そのツールの価格も高くなることと、またその更新頻度も多いわけではなかったため、手動変更作業による運用で対応しました。しかしモデルの変更がモニタリングできているわけではないので、その作業の煩雑性は問題でした。
一方、大規模アセンブリが軽量表示可能な3D CADは、詳細設計フェーズでも3D CADデータをそのまま使ってDRが実施でき、以降の工程以降でもデータ活用ができることが大きな利点でしょう。私が知る中では、国内メーカーの3D CADで、そのような使用法に対応しているものがありました。
私の経験では、専用ビュワーの操作性が3D CADと異なっていたため、DRの際に操作する設計者が苦労していたのを見ています。ささいなことですが、CADとの座標系が同じであるとか、操作が同じであるというのは運用時とても重要です。この3D CADと同じフォーマットを用いるビュワーへの期待は高まります。
よって、3Dデータのビュワーについては機能性、拡張性、コスト(導入/維持管理)の側面よりベンチマークを行うことにしています。
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