MONOist 医療機器開発支援ネットワークの特徴について教えてください。
土屋氏 医療機器開発支援ネットワークで肝になるのが、「伴走コンサル」です。これは事業者が製品を上市するまでの各段階で抱える課題に対し、各分野で専門性を有するコンサルが事業者に伴走し、参謀役としてソフト面を支援します。
ポイントは2つあります。1つは、開発の初期段階である、「市場探索」「デザイン・コンセプトの設計」において、販売まで見据えた事業戦略の「仮説」をしっかり練ること。もう1つは、開発規模が大きくなる第2段階となる「開発・試験・治験・審査・保険・販路」への橋渡しを円滑に進めるべく、企業(製造・販売)・医療機関の間の連携を進めることです。
伴走コンサルでは「作ってみたが売れない」「薬事申請は通過できたが売れない」といった事態を避けるべく、医療機器の開発・事業化戦略のアタマづくりをサポートしています。実際、成果を上げている地域では、開発初期から、医療機関・製造者に加え、販路を持つ事業者(製販事業者、ディーラーなど)を交えてデザイン・コンセプト設計を行い、開発プロセスの橋渡しをうまく進めていると感じます。
MONOist 医療機器開発支援ネットワークではどのような成果が出ていますか。
土屋氏 2014年11月から2015年7月までで相談件数は800件を超え、このうち伴走コンサルは約210件に達しており、自動車、電機電子、素材、ソフトウェアといった異業種からの参入も増えています。相談内容も約半数が「販路開拓」に関するもので、ここ数カ月の間にも、より具体的で事業化に直結した内容が増えてきました。
MONOist 医療機器開発支援ネットワークの今後の展望は。
土屋氏 設立からまだ1年もたたないところですが、この取り組みが一段と広がっていく中で、伴走コンサルの果たす役割は大変大きいものがあります。伴走コンサルとして、1案件につき3〜4人でチームを組み、医療機器メーカーやディーラーのOB、弁理士、PMDAでの薬事審査の経験者などが参加しています。
一方で、伴走コンサルを担う人材は、まだまだ不足がちです。これに対応すべく、現在、厚生労働省、文部科学省、AMED、日本医療機器産業連合会(医機連)、医療機器センター、日本医師会など、関係機関や地域支援機関が総がかりになって、特に事業化の知見がある伴走コンサル人材の発掘・育成を進めています。
現在を第2ステージとすれば、次の第3ステージも見据えておきたいと考えています。第3ステージでは“事業性の見極め方”、言い方を変えれば“原石の磨き方”が重要になると見込んでいます。その点では、例えば、大阪大学、東京大学、東北大学が2015年6月に発表した「ジャパン・バイオデザインプログラム」は、スタンフォード大学のバイオデザインプログラムを基に、国内で医療機器イノベーションをけん引する人材を育成することを目標とした取組です。このような取組を通じて、“原石の磨き方”をよく知った人材が増えていくことも期待しています。
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