同展は、日本科学未来館内の常設展「メディアラボ」内で体験ができる。八木氏は「歩容認証の研究にはより多くの歩行データが必要だ。しかしカメラ撮影が必須なので、以前は1人ずつ同意書へのサインを求めていた」と説明する。確かにプライバシーを守るという意味でこの手法は確実だが、データをより多く取得するのは難しい。
そこで今回、日本科学未来館という老若男女が多数訪れる場所でエンターテイメント性を持たせた展示を行うことにより、歩容認証という技術の認知度を高めつつ、歩行データを大規模に取得できる仕組みを構築した。そして、2種類の体験型展示では、個人情報の提供に同意すると、“お土産”として解析結果を印刷して持ち帰られるようにした。
同展を企画した日本科学未来館 事業部展示企画開発課 科学コミュニケーターの野副 晋氏は「今回の展示は、来場者にビッグデータ時代のプライバシーについて考えるきっかけにもなると感じている。また日本科学未来館を、展示を行うだけではない、将来性のある研究の実証実験の場としても提供できるということをしっかり示せれば」と説明した。「今後、このように集めたデータを他の研究にもシェアし、役立てていけるような同意の仕組みも模索できれば」と八木氏は述べている。
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