スマホの市場は大きな変化点にあります。先進国では、スマホのマーケットが飽和し、2013年は、日本でもアメリカでも売り上げが前年よりも減少しました(図3)。
ビジネスモデルは、通信業者との契約で、2年ごとに新モデルへの買い替え需要が発生する仕組みになっています。このため、携帯からスマホへの乗り換えなどは多少ありますが、台数は横ばいか微増程度しか見込めません。
全米家電協会(CEA=The Consumer Electronics Association) の発表では、スマホの平均単価は2010年には444ドルであったものが、2013年には345ドルに低下して、2014年には297ドルになるだろうとしています。
タブレットについては、既に飽和しているとの見方もありますが、まだ市場が拡大する余地はあります。しかし、ここでも問題があります。個人ユースでは、タブレット市場の拡大はPC市場の縮小につながっています。
ノートPCからタブレットへの買い替え需要がタブレット市場の拡大につながっているわけです。インターネットやメール程度にしか使っていなかったPCであれば、タブレットで十分に対応できます。個人ユース市場をメインにしていたVAIOはタブレットのXperiaと競合してしまったのです。PCはWindows、タブレットはAndroidと異なるOSを使うため、PCとタブレットは全く違う製品になり、競合が生じてしまったのです。
それに対し、AppleではPCとタブレット、スマホのハード、ソフトを全て自社で開発して、PCとタブレット、スマホのシームレスな連携を図っています。このため、スマホユーザーを取り込み、PCのシェアを伸ばしています。
ソフト(OS)を他社に依存している他のメーカーではAppleのような戦略は取れません。そこで、ソニーはOSを1つに絞る戦略を選びました。先進国で飽和したスマートフォン市場を減少させないためには、台数の増加が見込めないので、製品単価を上げるしかありません。電子機器で単価を上げるためには、通常の性能向上以上の性能向上を新製品に織り込まなければなりません。このためには、通常の実装技術の進歩以上の革新的な実装技術を採用する必要があります。スマホメーカーはスマホの大画面化やELや曲面液晶の使用など、分かりやすいところでの高付加価値、高価格化を狙った製品を出し始めています(図4)。
しかし、スマホの画面をあまり大きくしてしまうと、携帯電話としての基本機能の使いにくさや、小型タブレットとの競合など、新しい問題も出てきています(表1)。
Appleは2013年、スマホとタブレットを64ビット化しましたが、Androidは64ビット化されていないため、スマホ各社は64ビット化による大幅な機能強化ができない状態です。報道によると、2014年、バルセロナで行われた世界最大の携帯機器の展示会であるMWC(Mobile World Congress)2014 では各社、驚くほどのスマホの新機能は現れなかったとのことです。
このため、新しい市場を開発しようと、メガネや時計といったウェラブル機器の開発が盛んですが、まだ決定的な製品はできていません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.