世界500台限定販売のスーパーカー「675LT」、その開発は「海を行く船」マクラーレン 675LT 開発責任者 インタビュー(2/2 ページ)

» 2015年05月28日 09時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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プロトタイプの作成回数を抑える

 会見終了後に、ゲイトン氏にインタビューすることができた。その内容をQ&A形式で紹介しよう。

MONOist これまでどのような車両を開発してきたのか。

ゲイトン氏 Aston Martinの「ヴァンキッシュ」や、Audi、Bentley、Volvoなどで車両開発に携わった。2001年にマクラーレン・オートモーティブに入社してからは、「SLRマクラーレン」の開発に関わり、「12C」や650S、「P1」では主に内装を担当した。さまざな分野の車両設計を経験してきたこともあり、675LTの開発責任者を務めることになった。

MONOist 650Sのバリエーションモデルとなる675LTはどのように開発を進めたのか。

マーク・ゲイトン氏 マーク・ゲイトン氏

ゲイトン氏 650Sを構成する1000個以上の部品と、各部品のさまざまな特性から成るマトリックスを基に、675LTという車両を実現するために変更すべき点を検討していった。その結果として、650Sと比べて、全体で3分の1、エンジンで2分の1という部品の変更が必要になった。

 ただしこれだけの変更を行う上で、プロトタイプを毎回作っていては開発期間が間延びしてしまう。プロトタイプの作成回数を最低限に抑えられるように、解析や測定の技術を応用して、部品の変更によってどのような特性変化が起こるかを把握できるようにした。部分的なシステムの試験を行うためのプロトタイプ(ミュールカー)を10台作成したが、これはかなり少ない。今回の会見で展示した675LTが、全ての変更を反映した最終試作車(VP:Verification Prototype)になる。

ゲイトン氏の言うマトリックスを簡素化したもの ゲイトン氏の言うマトリックスを簡素化したもの。実際には、縦方向の部品の数、横方向の特性とも、さらに多くの項目から構成されている(クリックで拡大) 出典:マクラーレン・オートモーティブ

MONOist 各部品の「さまざまな特性」というが、自動車開発ではユーザーの感性に関わる数値化できないものもある。特にスーパーカーやスポーツカーで重要視されると思うが、これはどのように評価し、開発に反映しているのか。

ゲイトン氏 そういった感性の部分は、テストドライバーによるスコアリングが数値の替わりになる。SAE(自動車技術会)のアセスメントテーブルがベースになっており、1〜10点で採点する。例えばある項目について7.5点だったところを9点にしたいという目標がある場合、テストドライバーからそのための具体的な対策が指示される。

 これらのマトリックスを基に、開発チームの全員を目標に向かって導くのが開発責任者の仕事だ。現在の開発状況があるべき通りに進んでいるかを確認しつつ、必要があれば随時調整を行う。マトリックスは、海を進む船にとっての海図であり、開発責任者は船長のようなものだ。

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