McLaren Automotive(マクラーレン・オートモーティブ)は、全世界で500台限定生産のスーパーカー「McLaren 675LT(以下、675LT)」を日本初公開した。会見の内容と、675LTの開発責任者を務めたマーク・ゲイトン氏へのインタビューをお送りする。
McLaren Automotive(マクラーレン・オートモーティブ)は2015年5月22日、東京都内で会見を開き、全世界で500台限定生産のスーパーカー「McLaren 675LT(以下、675LT)」を公開した。英国での販売価格は25万5950ポンドとなっていたが、日本における税込み価格は4353万4000円となった。限定生産の500台のうち8%に当たる40台を日本市場で販売する見込みだという。
675LTは、同社が2015年3月の「ジュネーブモーターショー2015」で世界初公開したスーパーカーだ。車両名称の675LTは、「675」がツインターボチャージャー搭載の排気量3.8l(リットル)V型8気筒エンジン「M838TL」の最高出力675ps(497kW)、「LT」は1997年のル・マン24時間レースに挑戦した「McLaren F1」をベースに全長と全幅を拡大した「McLaren F1 LT(ロングテール)」のLTに由来している。
1年前の「ジュネーブモーターショー2014」で発表した「McLaren 650S(以下、650S)」をベースにしたバリエーションモデルとなる675LTだが、LTの名称通りのロングボディ化や、サーキットでの走行により適した走行性能や軽量化を実現するため、650Sから大幅な変更が加えられている。
マクラーレン・オートモーティブで675LTプログラム・マネージャーを務めたマーク・ゲイトン氏は、「2013年末に675LTの開発責任者に就任してから、675LTという車両をどう定義し、650Sから何を変えるのかについて検討を重ねた」と語る。そして「軽量化」「パワー」「パフォーマンス」「エアロダイナミクスの最適化」「ダウンフォースの向上」「ドライバーとの一体感」にフォーカスして、“ロングテール”の精神を表現することに決めた。
これらのフォーカスポイントを実現する上で、車両全体で33%、エンジンについては50%のパーツを、ベース車の650S変更することになった。
まず「軽量化」については、パワートレイン、ボディ、シャシー、電装品、内装の全てにわたって取り組むことで車両重量は1230kgとなった。650Sと比べて100kg軽くなっている。最も軽量化に貢献しているボディ関連では、650Sの「MonoCell(モノセル)」シャシーの素材である炭素繊維強化樹脂を各種外板パネルにも採用。フロントガラスも薄型化し、エンジンカバーをポリカーボネート製に変更した。シャシー関連も、サスペンションやホイールの変更によって軽量化に大きく貢献している。電装品でエアコンを標準装備から外したり、内装も軽量化に役立つアルカンターラの採用範囲を広げた。
「パワー」については、エンジンの改良が主軸になる。650Sのエンジン「M383T」を大幅に改良したM838TLは、軽量部品の採用や鋳物部品に機械加工を行うことによる精度向上などにより、最高出力を675psに高めるとともにサーキット走行で求められる急な加減速への対応力を向上した。加速時間は時速0〜100kmが2.9秒、時速0〜200kmが7.9秒。スーパーカーで重視される時速0〜200kmの加速時間は、650Sの8.4秒から大幅に短縮されている。最高速度は時速330kmである。
エンジンの新たな機能として加わったのが「イグニッションカット」だ。F1レーシングカーに採用されている技術であり、シフト変更の際に気筒内のスパークを一時的に停止することで、ドライバーは最速のシフト変更を体感できる。イグニッションカットは、シフトアップだけでなくシフトダウンでも働き、「シフトダウン時には急速にエンジン回転数が低下するので劇的な減速が可能になる」(ゲイトン氏)という。675LTは「ノーマル」「スポーツ」「トラック」の3つの走行モードを選択できるが、イグニッションカットは、スポーツとトラックで利用できる。
「エアロダイナミクスの最適化」と「ダウンフォースの向上」は、炭素繊維強化樹脂製のフロントスプリッターやサイドシル、アクティブエアブレーキとなるリヤウイングなどによって実現されている。また、出力向上に見合うエンジン冷却を行うため、ドア後部のメインラジエータを車両外側に16度回転させ、フロントエンドプレートからドアスカートに沿って供給されるエアを受け入れるミニダクトを追加するなどしている。
これらの650Sからの部品変更によって高い「パフォーマンス」を実現。「ドライバーとの一体感」では、675LTがサーキット志向であることを表現するため、シート、ペダル、ステアリング、そして車室全体からパワートレインのバイブレーションとノイズを感じとれるような施策も施した。
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