カーエアコンの冷房はなぜ冷えるのか(前編)いまさら聞けない 電装部品入門(18)(2/3 ページ)

» 2015年05月07日 10時00分 公開

代替フロンも代替しなきゃダメ?

 この冷凍サイクルに必要不可欠な、液化と気化を半永久的に繰り返す媒体を冷媒といいます。一番有名な冷媒はフロンガスでしょう。

 このフロンガスは大気に放出されるとオゾン層を破壊してしまうことが判明し、代替フロンと呼ばれるものが用いられるようになりました。

 しかしこの代替フロンも温暖化に影響することが判明しています。今はまさに次世代を担う無害な冷媒が模索されている真っ最中といえます。


代替フロンの「R134a」 代替フロンの「R134a」

 自動車用に用いられている冷媒もこの流れを受けており、当初は「フロン12(R12)」と呼ばれる冷媒が主流でしたが、1990年代から「R134a(HFC-134a)」と呼ばれる代替フロンを中心に、R12は順次置き換えられていきました。

 現在もほとんどの自動車のカーエアコンにはR134aが使用されています。しかし、温暖化防止に世界中がベクトルを合わせていることを考えると、1日でも早く次世代冷媒への切り替えが求められます。既に欧州では、「HFO-1234yf」という次世代冷媒が導入されていますが、従来の冷媒とは違って引火性があることから、まだ全面導入までには至っていません。

 特に自動車のカーエアコンの場合、一般家庭で用いられているエアコンと比べると、事故などによる外的応力によって冷媒が大気中に放出される可能性が極めて高くなります。となると、引火性というのは命に関わる重大な要素であり、まだまだ研究開発が必要な状態と言えます。

 ちなみに、冒頭で例に出したアルコールも冷媒としての可能性を十分に秘めていますが、自動車用として用いるとなるとHFO-1234yf同様に引火性を持つことになります。このため「革新的な冷媒」とまでは言えないでしょう。

 さらに言えば、これまで冷媒として利用されてきた物質は、アルコールよりもはるかに蒸発しやすい性質を持っています。蒸発しにくい冷媒を使って、従来通りの冷房性能を実現するにはさまざまな工夫が必要なわけですから、アルコールを冷媒に使うことはそう簡単なことではないのです。

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