バラにトゲあり、ステンレスにワナにあり甚さんの「サクッと! 設計審査ドリル」(11)(1/3 ページ)

今、さまざまな物に使われているステンレスですが、注意しなければならないポイントがあります。それは何か、あなたはご存じですか?

» 2015年04月10日 10時00分 公開

当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。甚さんいわく「イマドキな若者」。機構設計者。通称、良君


エリ

沢田恵梨香(さわだ えりか)

ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


>>前回

 登場して歴史の浅いステンレスが急激に使われて、何も起きないはずがありません。前回の終わりで、「設計職人なら、その裏を読むべきだ」と説明しました。その裏とは……。

 これは、設計審査における定番の質問でもあります。さて、それが原因で起こるトラブルとは、一体何でしょうか?

【問題10】

図3:クライアント企業における設計審査で下部構想が却下 出典:「ついてきなぁ!材料選択の『目利き力』で設計力アップ」(日刊工業新聞社刊)

 図3上は、市販されている「ファストン端子」です。身近には車の配線で多用されていました。めっき処理を含めたそのプラグとレセプタクルの断面が示されています。一方、図3下は、当事務所のクライアント企業にて、低コスト化を施した概略構想図です。ファストン端子のプラグ機能をステンレス板金の端部に持たせました。

 図3下の点線部が設計審査で却下されました。その理由について述べてください。

甚

そのトラブルとは、「電食」だぜぃ。これも、安全率同様、設計審査の定番質問だぜぃ。良君! ちょいと電食について説明してくれねぇかい。こういうのは得意だろう?


良真

ガッテン承知! 僕は富士山麓大学の首席院卒! 学問に関してなら任せてください!!


エリカむか

うわっ! 出た、またこのせりふ……(図面も描けない、おまけにポンチ絵からも卒業できないくせに!!)。


良

小学生で習うことで、簡単に説明にします。図1中の「電解質溶液」とは食塩水のことです。ビーカーの中に、亜鉛板と銅板を入れると、豆電球が光るという実験ですよ。理科の授業でやりませんでした? 懐かしいでしょう?


図1:ボルタの電池と電食の説明 出典:ついてきなぁ!材料選択の『目利き力』で設計力アップ(日刊工業新聞社刊)
エリ

腐食する金属は必ず「マイナス側」なんですよね?


良

そうだよ、エリカちゃん! そのことを知っている技術者って、本当に少ないみたいだね。ちなみに、これを「ボルタの電池」や「腐食電池」なんていうんだけど。


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