スキル評定の後、その結果から、今後行うモデルベース開発教育の題材について議論が行うことになった。
予想はしていたが、キャリアの分布がハッキリと分かれているなぁ。機能設計以降のウェイトが大きい。サプライヤだからこその結果なのかもしれない。
でもモデルベース開発の一番のメリットは、開発プロセスの流れの中で、関連する部署の間で共通のモデルを媒体としてコミュニケーションを密にし、手戻りの無い開発を実現できることですよね? コーディングと同じ様にモデルを扱って開発するのであれば、モデルベース開発の本当の良さは、あまり感じてもらえないように思います。
そうだね。スキル評定の結果を見る限り、開発の初期段階となる上流で設計をする技術者がとても少ない。モデルベース開発のメリットを感じてもらうためにも、開発の初期段階から最終段階まで全ての開発プロセスを体験できるような教育内容にするべきだと思う。
要求分析から設計、組み込み、そしてテスト、キャリブレーションまでを体験できるものだと、やはり何らかの動作をする組み込み機器ということになりますよね……。そういえば、以前どこかで見たのですが、LEGOのブロックで組み立てたロボットで競技する大会がありました。ETロボコンっていうものだったと思います。
というわけで、基盤強化チームでETロボコン(ETロボットコンテスト)について調査することになった。
例年行われているETロボコンは、個人から企業まで幅広い参加者があり、ただのレースだけではなく、ロボットに組み込むモデルの審査も併せて行うことが特徴となっている。レースとモデル、それぞれで高得点を取れなければ優勝できないのだ。
私は競技そのものに興味をそそられたが、まずはこのコンテストで使われているLEGOのレギュレーションや環境について詳しく調査することにした。その結果、三立電機にモデルベース開発の教材として利用できそうなことが分かった。
後日、山田課長の承認を得てLEGOのキットを購入し、倒立振子型のロボットを組み立てた。合わせて、制御ソフトに関しても調査し、ベースとなる倒立振子モデルなども入手した。
多少の試行錯誤を経て、コントローラモデルを自由に構築できるようになった。コード生成を実行して、LEGOにコントローラモデルを転送する仕組みも完成させた。
また、機能開発に必要となる情報、モデルの機能や精度といった要求事項を整理しやすいフォーマットなども用意し、要求事項を織り込んだコントロールモデルを使って、実機を動かして確認できる教材を作成した。
この教材を使えば、要求整理から実機のテストと確認までを一貫して体験でき、開発プロセスにおけるモデルベース開発の恩恵を体験してもらえるはず!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.