ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第1回はトヨタ自動車の河合大洋氏による講演だ。
水素を燃料とする燃料電池車が2014年12月、ついに量産発売された。トヨタ自動車の「ミライ」である。2015年夏〜秋にかけて米国と欧州でも販売を始めることで、他社に先駆けて燃料電池車の普及を進めていく構えだ。
ミライから約1年遅れることになるが、ホンダも2016年3月末までに燃料電池車の量産販売を始める。そして日産自動車も、早ければ2017年ごろに燃料電池車を市場投入する方針を崩していない。
これら国内大手自動車メーカー3社は、個社として燃料電池車の技術力に優れているだけではない。トヨタ自動車はBMW、ホンダはGeneral Motors(GM)、日産自動車はダイムラーとフォードと、燃料電池車を共同開発する協業関係を構築し、その中で主導的な役割を果たしている。燃料電池車のビッグ3と言っても過言ではないポジションにある。
「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」(2015年2月25〜27日、東京ビッグサイト)の3日目に当たる2月27日に開催された専門技術セミナー「いよいよ普及が始まる燃料電池自動車〜日本の実用化開発と普及展望〜」では、これら燃料電池車ビッグ3の担当者が登壇した。本連載ではその講演内容をリポートする。
第1回は、トヨタ自動車 技術統括部 担当部長の河合大洋氏による「燃料電池自動車(FCV)の開発と初期市場の創出」と題した講演の内容を紹介する。
トヨタ自動車における燃料電池車の開発は1992年にスタート。1996年には、燃料電池と水素吸蔵合金タンクを搭載した車両を紹介した。2002年に、世界に先駆けて日本と米国で限定販売を開始し、2005年には国内で初めて型式認証を取得している。
そして2008年には、走行距離と氷点下始動性を大幅に向上したモデル「FCHV-adv」を投入。日米で100台以上を使って実証試験のための走行を行い、その累計実績は200万kmを突破した。
2014年12月15日にはセダンタイプの量産型燃料電池車「ミライ」を発売した。2015年秋ごろには米国・欧州市場への投入も計画している。日本での販売目標台数は2015年度末までで約400台。車両価格は、税別で670万円に抑えた。発売から約1カ月経過した時点での受注台数は約1500台と、初年度販売目標台数の4倍近くに達した。このため年間生産能力を、2015年の700台から2016年は2000台程度、2017年は3000台程度に拡大する方針だ。
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