日本の製造業よ、第4次産業革命で規格策定の舞台に立てスマートファクトリー(1/3 ページ)

ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムなど、世界的にICTを活用した新たなモノづくりが胎動している。その中でドイツおよび米国のプロジェクトそれぞれに参加し、存在感を示しているのが米国National Instrumentsだ。同社でこれらの活動に参加しているグローバルテクノロジー&マーケティングディレクターのラマン・ジャマル氏に話を聞いた。

» 2015年03月18日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 現在モノづくりを取り巻く環境は大きな変化を遂げようとしている。IoT(モノのインターネット)を活用し、製造工程を高度化させようという動きが活発化しているのだ。例えば、ドイツでは連邦政府が主導する国家プロジェクト「インダストリー4.0」が進められており、主要なドイツ企業や研究機関、大学などが参加し、ビジョンの実現に向けて多くのクラスタが設立され研究開発が始まっている(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。

 一方米国では、インダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)として、大手企業にIoTの産業実装に向けた取り組みが行われている。製造業の生産性に関してはGEが中心となって取り組んでおり、日系企業も数社が参加している(関連記事:産業機器向けIoT団体「IIC」、その狙い)。

 この中で、計測/制御機器メーカーとして、多くの製造業のモノづくり革新に携わる米国National Instruments(NI)は、IICに参加する他、ドイツのインダストリー4.0プロジェクトにも積極的な関与を見せている。NIにおいて、これらの取り組みを推進する グローバルテクノロジー&マーケティングディレクターのラマン・ジャマル(Rahman Jamal)氏にNIとしての新たなモノづくりへの取り組みと、日本企業への期待について話を聞いた。

サイバーフィジカルシステムを定義

MONOist 現在のモノづくり革新の動きについてどう見ていますか。

ジャマル氏 まず歴史を振り返ってみると現在のインダストリー4.0やIIoT(Industrial Internet of Things、産業用IoT)の前に、カリフォルニア大学バークレー校や全米科学財団などで学術的に定義されたのが「サイバーフィジカルシステム」だ。サイバーフィジカルシステムとは、インターネットおよびコンピューティングの力(サイバー)と、実際の世界(フィジカル)を結び付けたシステムのこと。これにより、現実の世界の情報をサイバー空間に送り、コンピューティングパワーを活用して解析してフィードバックして、現実世界でより良い結果を得るというようなことが可能となる。

photo NI グローバルテクノロジー&マーケティングディレクターのラマン・ジャマル氏

ジャマル氏 2006年には全米科学財団で最初のワークショップが開催された。テーマは「サイバーフィジカルシステムをどう構築するか」というものだったが、その基調講演としてNIの創業者であり社長兼CEOであるジェームズ・トルチャード(James Truchard)が登壇している。

 初期のサイバーフィジカルシステムは学術的なものだったといえるが、現在の状況というのはこの初期段階とは大きく変わろうとしてきている。これらの変化を象徴する動きが3つある。1つがIoTの進展、もう1つはドイツによるインダストリー4.0プロジェクトの実施、3つ目が2014年に設立したIICだ。IoTの活用が単純に広がってきた他、政府や民間企業が大規模に協力し合う動きが広がった。特にIoTの発展により、サイバーの世界とフィジカルの世界をダイレクトに結べるようになってきている。

 IoTには大きく分けて2つの動きがある。1つはコンシューマ向け、もう1つが産業向けだ。産業向けの領域ではスマートグリッドや、スマートモビリティ、スマートファクトリーなどがある。インダストリー4.0の取り組みはこのスマートファクトリーの取り組みを象徴するものだといえる。2014年に発足したIICはインダストリー4.0よりは少し対象領域が広く、幅広い産業へのIoTの実装を目指している。

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