enmono宇都宮氏 面接時間が1時間って、けっこう長いですね。
鈴木氏 そうしないと、思いをうまく話せない人は落ちてしまいます。クリエーターって、しゃべれないんですね。やる気のある人に利用してもらいたいという思いで、ゆっくり話を聞いて、審査させていただいています。成長意欲のあるクリエーターに応募してもらうための仕掛けも考えました。2回目の入居者募集前に、毎月のようにセミナーを開催したのです。
enmono宇都宮氏 どういうセミナーをされていたんですか?
鈴木氏 デザイナーの創業体験談とか、雑誌の編集長に「どのようなブランドが目立つか」話を聞いたりしました。「セミナーに来るクリエーターはやる気があるだろう」と、その人たちを入居予備軍に育てました。
enmono宇都宮氏 そうすると、台東区以外の人も増えてきそうですね。
鈴木氏 2回目の募集の時、15部屋に対して90組の応募がありまして、全国から優秀なトップクラスの若手クリエーターが集まってくれました。また、卒業生がデザビレ周辺にお店を出し始めると、雑誌の地域特集でクリエーターの町として紹介されるようになって、この地域を盛り上げようという動きが本格的になったような感じでした。
enmono宇都宮氏 デザビレの目的が成果として出てきた、と。
鈴木氏 ありがたいことに、地元が盛り上がってきました。先ほどデザビレが施設公開をしている話をしましたが、最初は文化祭のようなイベントだったんです。イベントをきっかけに、クリエーターと地元の方との交流が生まれていきました。東京スカイツリーの開業前、卒業生の店や近くの商店街を巻き込んでイベントの規模を拡大し、「モノマチ」という地域イベントに発展しました。商店街から人があふれて、「30年ぶりのにぎわいだった」と地元の方々に喜んでもらえたのはうれしかったです。地元の方々も町のため、モノづくりのために何かしたいと思っていたのですが、活躍できる場がなかったのです。今では地元の方が中心となって、町おこしイベントとして盛り上げてくださいます。
enmono宇都宮氏 それまでの鈴木さんのご苦労があったから、というのもありますよね。
鈴木氏 覚悟を決めざるを得ないというか、逃げ道がないというか。最初に立ち上げた人たちは、同じ苦労をされているわけですよね。皆、自分がやっている仕事を日本一、世界一にしたいという気持ちで。それが創業者魂じゃないですかね。私は、手づくり作家のような小さい規模のビジネスをしている人たちが、モノづくりだけで食べていけるような手助けをしていきたいと考えています。
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