ヤンマーでは農業機械へのIoT技術を取り入れたサービスを提供しているとともに、社内のIT環境も積極的に再構築しているという。
ヤンマーでは2012年に創業100周年を迎えたことを機に、IT戦略やブランド戦略などの強化を進めている。農業機械などへのIoT技術の活用によって、稼働レポートやメンテナンス管理、盗難抑止などの先進的な取り組みを行うとともに、社内のデータの一元活用環境も整えているという。2014年12月9日に開催されたCAD/PLMベンダー PTCユーザー会「PTC Live Tech Forum Japan」で、ヤンマー 経営企画ユニット ビジネスシステム部 執行役員 部長の矢島孝應氏が、同社のIT戦略を中心に語った。
ヤンマーが2013年1月から提供している農業機械など向けのM2Mシステムが「スマートアシスト」である。これは農場での機械の稼働状況やメンテナンス情報などさまざまなデータが収集・利用できるようになるサービスだ。スマートアシストにはダイレクトとリモートという2つの機能がある。ネットワークを通じて常に情報を発信し、管理するとともに、機器の詳細については、サービス担当者が現場に行って機械本体と接続して状況を見るという形を取る。また機械の情報だけでなく、作業そのものについてもデータを収集できる。作業時間にロスがないか、またコンバインであれば「収穫量はどのくらいか」といったことも把握できるようになっている。
これらのデータをユーザーはPCやタブレット、スマートフォンなどで閲覧できる。近年は農業規模が大きくなっており、1ユーザーで何台もの機械の管理・稼働状況のレポートを出力しているという。このサービスを用いると、GPSを利用して機械が動いた経路を記録でき、作業日報に利用できる。
また、あらかじめ作業範囲や作業時間などの指定をしておくと、その範囲を超えた瞬間に、ユーザーとヤンマーに連絡が届く仕組みも提供する。実際、盗難予防に何回か成功しており、そのうち何件かは警察と連携し、盗難商品がどこにあるかを把握して貼り込むなどの効果を上げたそうだ。
「新しい農業の形ということで、GPSとITを使った農業生産性の見える化と次世代農業への展開を進めている」(矢島氏)。このスマートアシストは農業だけでなく、同社が扱う漁業、プレジャーボートや建築機械、エネルギーシステムなどでも利用可能にしていくという。
マーケティング面での取り組みとしては、従来はバラバラだったヤンマーのWebコンテンツを全てyanmar.comにまとめた。もう1つの取り組みとしては、来年のリモートサービスセンター設立を挙げた。ここでユーザーからの問い合わせや、スマートアシストにおける機械からのアラームを受けたり、ユーザーにそれをコールしたりといった業務を行う。またそういった中で集めたビッグデータ解析も担う。さらに今後は機器について、自動車のような6カ月後点検や車検といったタイムベースメンテナンスではなく、機械そのものの状態によって診断するコンディションベースメンテナンスを行えるような環境を整えていきたいという。リモートサービスセンターには遠隔監視室やバックオフィス、さらに顧客へのプレゼンテーションゾーンを設置する。
一方ヤンマーでは、社内のIT環境の整備も進めている。3次元CADのPro/ENGINEER (現: PTC Creo)を1999年に導入し、現在は全世界の拠点で展開しているという。現在は同社が扱うエンジンや発電機、農業機械、建築機械、ボートやエンジニアリングシステム、コジェネシステムなど全ての商品情報の一元化を行っているところだ。「今後もさらに情報一元化を進めながら、技術力の強化を図ることが、足場を固める上で最大のポイントになる」(矢島氏)という。
グローバルでの情報共有を目指す。同氏が入社した2013年当時は、世界中のヤンマーグループ拠点ごとでコミュニケーション系やデータの共有ファイルサーバなどがばらばらだった。今後、Microsoft OutlookおよびSharePoint、Lyncを一貫して用い、世界中でクラウド経由で利用するという。今年夏に国内をこのシステムに切り替え、今年度中に海外への展開を進めるということだ。
また社員の働き方については、どこでも同じ形で働けるような「どこでもワーク」、ユーザーに問題があれば担当がすぐに集まって対応できるような体制「コ・ワーク」、一人の経験を生かし同じ失敗を繰り返さないといった取り組みを進める「ナレッジワーク」の3つを目指す。
さらにこれらを支えていくために、グローバルIT基盤として「ヤンマープライベートクラウド」の構築に向けて進めているという。いつでもどこでも必要なリソースを、必要な時に提供でき、すぐ返却できるとし、世界中でできるだけ同じサービスを各拠点に提供するということだ。
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