通勤通学中にも取り組める、各企業における設計審査の定型質問に基づいた問題集。今回は、治工具のヒンジシャフトの設計変更についてです。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。甚さんいわく「イマドキな若者」。機構設計者。通称、良君
沢田恵梨香(さわだ えりか)
ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回も説明しましたが、ジュラルミンの代表格「A2017」は、材料関連の専門書では、「鋼材に匹敵する強度」と記述されることがあります。若き日の筆者も、その全ての強度特性が「鋼材と同等」だと思い込んでいました。後に、「匹敵するのは引張り強さだけ」と知ったときはショックでした。鋼材のS45Cと比較すると、強度計算に必須の縦弾性係数は、70÷139=0.5、横弾性係数は、25÷75=0.33。つまり、それぞれ50%、67%減。専門書よりも自分自身の勉強不足を恨みました。
うーん、材料力学って難しくて苦手なのよね……。あ、甚さん、【問題4】の答えを早く教えてくれませんか。
以下の文章は、「寿司職人」の目利きについての説明です。文章内にある【魚】は設計職人にとって【材料】となります。【マグロ】は、切削用材料、板金材料、樹脂材料です。さて、ここで述べられている「目利き力」5項目は、機械材料の場合はどんな項目が挙げられますか?
プロの代表格である寿司職人は、どのような種類の【魚】でも、限られた予算の中で、より良いものを選ぶには「目利き力」が必要だ。これが、プロの寿司職人としての原点である。そして、目利きが難しい【魚】の代表格が【マグロ】である。
しかも、【1本何百万円にもなるのがマグロであり】、失敗が許されない。まさしく「目利き力」が問われる。
さて、その「目利き力」とは、以下である。
【マグロ】の命は、脂の乗りと鮮度である。
限られた条件の中で最高の食材を仕入れるための「目利き力」である。
ああ、答えか? これだぁ!
プロの代表格である技術職人は、どのような種類の材料でも、限られた予算の中で、より良いものを選ぶ「目利き力」が必要である。
これが、プロの技術職人としての原点である。
そして……、目利きが難しい材料の代表格が切削用材料、板金材料、樹脂材料である。
しかも、商品は3つの材料で90%を占め、「失敗」が許されない。まさしく、「目利き力」が問われる。
その「目利き力」とは、
材料の命は、QCDである。
限られた条件の中で、最高の材料を選択するための「目利き力」が上記である。
どうだ! すっきりしたろがぁ! 職人とはなぁ、「目利き力」を有してこそだぜぃ! 目利きを誤れば、二度と客は戻ってはこねぇ!
13項目も! 5項目って言ってたじゃないですか! ブーッ!
そりゃあくまで寿司職人の場合だ! 機械材料の場合も5項目だとは言ってない!
うちのお父さん(寿司屋の辰兄ィ)は、たった5項目でいいんですね。もしかして設計の仕事より楽なのかしら?
べらんめぇ! オヤジの苦労も知らねぇでよぉ、あ〜ん? 目利きの項目は、数が多い方が楽なんだぜぃ。数が少ないほど、修行がてぇへん(大変)だぁ。そんなぁことも知らねぇで、転職試験に落ちて、ヤケ酒たぁなぁー!
ううっ……!
あのエリカちゃんが、ひるんでいる!
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