「どうせ無理」をやめよう――ロケット開発する町工場・植松電機SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2014から(1/2 ページ)

「ロケットなんて普通は作れない」というのは思い込み。「どうせ無理」と言わずにどうしたらできるか考えてみよう。

» 2014年12月10日 10時00分 公開
[加藤まどみ,MONOist]

 2014年11月11日に開催されたソリッドワークス・ジャパン主催のSolidWorksユーザー向けイベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2014」で、植松電機の植松努氏が「思うは招く〜夢があればなんでもできる〜」のタイトルで講演を行った。

 植松電機は北海道赤平市にある企業で、ショベルカーなどに取り付けて産業廃棄物から鉄を取り除くのに使う電磁石を生産しており、全国シェア8割であるという。また植松氏は民間人としてロケット開発に携わっている。低コストで安全なロケットとして宇宙開発関連の研究機関などからひっきりなしに見学や相談があるという。

植松電機専務取締役、カムイスペースワークス代表取締役、NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター理事 植松努氏

 植松氏は航空機設計に携わる企業に勤めた後、父親が経営する植松電機に入社した。そこで分別用電磁石の開発などに携わった。開発した製品はよく売れたが、修理依頼が来るとそのたびに現地に行く必要があり、大きな負担だったという。そこで「壊れなければいい、または壊れても自分で直せる物を作ればいいだろう」(植松氏)と考えた。そうして作った製品を売ろうとしたところ、販売会社から「変わったものを作っても説明できないから売りにくい。他と同じでいいから安くして」と言われてしまった。

 そこで植松氏は自分たちで直接販売することにした。だが一方で「壊れないものを売ると、行き渡ればそれ以上売れなくなると言われた」(植松氏)。そこで値切る人には売らないようにするとともに、納期を待てる人にのみ販売するようにした。在庫を抱えることがなくなり、利益率を確保できるようになった。そして時間ができるという好循環が起こり、研究開発ができるようになったという。「企業はやはり研究開発をしてこそ」と植松氏は語る。

子どものころからあこがれた宇宙開発へ

 当時、植松氏の人生において非常に重要な出会いがあった。安全なロケットの研究を行っていた北海道大学大学院 教授の永田晴紀氏である。ロケットの打ち上げコストの中でかなりの割合を占めるのが、危険物管理コストだ。そのためロケットは危険物管理コストを相対的に小さくする、つまりロケットを大きくするほどコストメリットが出るという仕組みになっていた。だがコストが掛らなければ、小規模のロケットでも採算が合い、「宇宙ゴミを片付ける」などの用途も考えられる。だが永田氏は研究費が足りず、開発を諦めようとしていたそうだ。一方植松氏は「どうせ無理」と考えられている宇宙開発がしたいと思っていた。

 こうした2人が出会うことで、それぞれの思惑が一致し、最終的に共同開発を行うことになる。研究開発を進める中では、数多くの失敗をしてきたと植松氏は語る。「原因はいろいろあるが、一番大きな理由は“世界初”のことをしているから。やったことがないことをやると失敗するのは当然だ」と植松氏は言う。

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