唯一の違いは、ライセンス契約内容と使用条件です。マイクロソフトのEmbeddedライセンスは、主にOEMへライセンスを提供し、OEMにてWindows Embedded Serverをシステムへ組み込んでエンドユーザへ提供します。OEMは、Embeddedライセンスを購入する前にまずCustomer License Agreement(CLA)を締結し、その後OEM PreInstall Kit(OPK)を入手してシステムへOSをインストールします。続いてアプリケーションやドライバなどをインストールして最終的なシステムのマスターイメージを作成し、出荷するすべてのシステムへ展開します。
Windows Embedded Serverは特定用途向けに利用が限定されたライセンスのため、ライセンス料が一般のWindows Serverと比べて低く抑えられています。また、データベースを使用してデータを収集および解析をするようなサーバの場合はSQL Serverもインストールして運用することになりますが、SQL Serverも一般のライセンスに比べて低価格で提供されており、Windows ServerとSQL Serverを組み合わせて、Embeddedライセンスで構築すれば、より大きいコストメリットが得られます。
Windows Embedded Server製品群には、Windows CAL(Client Access License:クライアントがサーバへアクセスするための権利。通常は別売で提供される)が不要な製品もあります。例えば以下の製品にアクセスする際は、Windows CALが必要ありません。
通常、Windows Serverにアクセスするユーザもしくはデバイスが存在する場合、必ず、ユーザCALもしくはデバイスCALを購入しなくてはなりません。アクセスするユーザ数もしくはデバイス数分のCALを購入する必要があるため、コストや管理に影響します。
上記に記載したWindows Embedded Server製品は、CALを購入しなくてもユーザやデバイスがサーバにアクセスすることができますので、コストや管理の負担が軽減され、大きなメリットがあります。ただし、例えばWindows Storage Serverはストレージ用途のシステム専用ライセンス、Telecommunicationsはテレコム用途のシステム専用ライセンス、といった利用制限があります。
Windows Embedded Server製品は、製品の長期供給が保証されているためOSの使用バージョンを固定でき、開発や検証の工数を削減できることから、以下のような業界・製品に使用されています。
専用用途のサーバなら、上記に限らずWindows Embedded Serverの利用が可能です。
最後に、Windows Server 2003/2003 R2の延長サポート終了に備えた対策について触れておきます。Windows Server 2003/2003 R2は2015年7月15日(日本時間)をもってマイクロソフトの延長サポートが終了します。サポートが終了するとセキュリティ更新プログラムの提供が受けられなくなり、脆弱性対策ができない状態となります。また、セキュリティメーカーからもウイルス定義ファイルが提供されなくなる可能性もあります。
延長サポート終了に伴う対策として、Windows Server 2012 for Embedded Systemsへの移行をお薦めします。Windows Server 2012 R2 for Embedded Systemsは実運用環境を見据えたHyper-Vや大幅に向上したストレージ機能をもつ最新のサーバOSで、標準で高度な機能が提供されるためコスト削減ができるのはもちろん、サポートも10年と長期に渡って受けることができて安心だからです。
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