ブリヂストンが発表したCAIS3は、加速度センサーで得たタイヤの中心方向に向かう、径方向の加速度情報を基にタイヤのたわみ具合を解析するのがポイントとなっている。
もしタイヤが接地していない状態であれば、径方向の加速度に変化は起こらない。しかし、クルマにタイヤを装着して走らせる場合、もちろんタイヤは地面に接地することになるので、接地した部分は地面と同様に平らになる。このため、加速度センサーが接地面にさしかかると、径方向の加速度は急激に減速する。
さらに、現実にタイヤが接地している状態では、車両などの重さが加わっているため、接地面の両端部分にたわみが生まれる。この状態を加速度センサーで計測すると、接地面に至る直前のたわみの部分で加速度が増加する。
新品のタイヤと摩耗タイヤを同じ力で路面に押しつけた場合、厚みが薄い摩耗タイヤのほうがたわみが大きくなる。等しい力を受けて接地され、同じ速度で回転しているこの2つのタイヤを加速度センサーを用いて計測すると、たわみが大きい、つまりより急激なカーブを描く摩耗タイヤの方が、径方向の加速度が大きくなる度合いがさらに増大する。
CAIS3は、こうした原理を利用してタイヤ内に接地した加速度センサーから得た径方向の加速度の波形の傾き具合を解析し、同様に取得した新品のタイヤのデータと比較することで、現在どの程度タイヤが摩耗しているかを把握している。ブリヂストンが行ったCAIS3の実証実験では、タイヤの摩耗が初期から中期の場合にタイヤ溝の減少具合を誤差1mm以内の精度で推定することができたという。
CAIS3に利用されているセンサーは、径方向の加速度、内圧、温度を検知する。無線通信機も内蔵されており、センサーで取得した情報は外部に無線で送信している。その通信方式について若尾氏は、「2.4GHz帯域を使用しているが、Wi-FiやZigBee、Bluetoothなどの一般的なものではない。現在は実証実験のフェーズということもあって、より省電力の通信が行える技術を使用している」と述べる。
センサーを稼働させるための電力は、タイヤ内に設置されたタイヤの回転力を利用して発電する発電機を利用している。発電量は数mWで、無線通信機能を持つセンサーを約8秒間動作させることができるという。
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