玉置氏は、介護・医療支援向けのロボットに加え、実用化についてより中長期的な視点で開発を進めている開発事例として、生活支援ロボット「HSR(ヒューマンサポートロボット)」を紹介した(関連記事:ヒトとロボットの共生のカタチ――トヨタが目指した自立生活支援ロボ「HSR」)。
HSRは、手足の不自由な人や高齢者の支援を目的に開発された。折りたたみ式のアームを装備し、頭部には各種カメラに加え、距離センサーやタブレット端末などが搭載されている。タブレット端末からHSRに落ちているものを拾うといった動作の指示や、遠隔から見守るためのロボットとしても利用できる。
現在、トヨタ自動車はHSRの実証実験を神奈川県横浜市内のリハビリ施設内で行っている。玉置氏は「今後改良を重ね、2015〜2016年内にはよりレベルアップしたHSRを提供する予定」としている。
玉置氏はこうしたロボット分野の事業について「ロボットは自動車と同じく幅広い関連技術の集積。トヨタ自動車としては、自動車に続くモノづくり産業として、ロボット市場の拡大を期待を寄せている」と語る。その一方で「ロボットと聞くと、とても華やかに聞こえるかもしれない。しかし、技術だけでなく、現場で求められているニーズの把握がとても重要になる。ロボット開発は大変どろくさいものになっていく」(同氏)と話す。
また、玉置氏はロボットの産業化や市場の拡大のために必須となる実用化に向けた課題についても言及した。まず同氏が事業的観点からの課題として挙げたのは、ロボットを商品と考えた際のコストパフォーマンスの悪さだ。「少量生産かつ、現場への導入を考慮した価格を実現するためには、機能の適正化や自動車などとの部品の共通化などを検討していく必要がある。ロボット商品のビジネスモデルを構築していくことが重要」(同氏)。
さらに玉置氏は、安全基準や認証規格など、ロボットを受け入れる社会制度の面についても「2014年の3月にサービスロボットの国際安全規格ISO13482がリリースされた。しかし、まだ一部が整理された状態であり、より詳細な規格を今後検討していく必要がある。トヨタ自動車もこうしたロボットの実用化に向けた産学官が連携する取り組みに積極的に参加している」と説明した。
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