MONOist主催「第1回 3Dモデリングコンテスト」。初開催にもかかわらず、総データ数255(全152作品)と非常に多くの作品が寄せられ、審査も難航したが、ようやく発表の準備が整った。超豪華審査員のコメントとともに、グランプリ作品を紹介しよう!!
皆さん、こんにちは。3Dモデリングコンテスト事務局です。2014年2月3日から約1カ月間エントリーを受付けていた「第1回 3Dモデリングコンテスト」の審査がようやく完了しました(力作が多く大変でした)。
アイティメディアとして初めての試みということで、大きな期待と(それ以上の)不安を抱いていましたが、フタを開けてみると、総データ数255(全152作品)、参加者103人(チームの場合は代表者のみカウント)と、非常に多くのクリエーターさんに作品を投稿していただきました!! まずは、本コンテストに参加してくださった皆さまに、御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございましたッ!!
審査結果の発表の前に、少しだけ応募作品の傾向を紹介したいと思います。作品数で見てみると、「実用部門」が86作品と最多。以降、「オリジナルキャラクター部門」(42作品)、「スマートデバイスケース部門」(24作品)と続きます。“実用”というテーマが少し広過ぎたかなという反省点もありますが、3Dプリンタの活用の方向性として、まずはパーツなどの実用品や日用品、便利グッズなどが有力なのかなという印象を持ちました。
また、事務局が一番盛り上がると期待していたスマートデバイスケース部門ですが、こちらはやや控えめな結果となりました。特に「iPhone」向けの作品が多かったのですが、市販のケースなども豊富なので“買った方が早い”ということかもしれません。そして、「ITちゃん」と「今出しょう子」というアイティメディアの売れっ子2次元キャラ(!?)をサンプルとして投入したオリジナルキャラクター部門は、大方の予想通り、女性キャラが目立ちました! この手の職人さんが多いのか、ご自身でデザインした完全オリジナルのキャラクターが多数寄せられ、審査が一番難航しました。
さて、もったいぶっても仕方がないので、各部門のグランプリの発表に移りたいと思います。まず、86作品(91データ)が寄せられた実用部門の発表です!!
実用部門のグランプリに輝いたのは……、
三出印太さんの「判緒(はんお)」です!
【作品の説明&ポイント】
へその緒のように、ゆがみながら長く伸びたハンコ(印鑑)。これをノコギリで切ることで、自分だけのハンコを作り出すことができます。100円ショップでもハンコが売っている時代ですが、大量生産されたそれらは全て同じ印影であり、この世でたった1人の自分(のハンコだということ)を証明することができません。
この作品は、名前の印字をゆがませながら押し出した(積層した)形をしています。そのため、どこの断面で切っても同じ名前でありながら、変形した印面が現れます。職人の手作業ではなく、3Dデータ上での無作為なゆがませ方、それを切る断面の適当な位置決め、実際の切断作業の出来栄えにより、大量生産では出せない“違い”を生み出すことが可能です。
例えば、子どもが成人を迎えて1人立ちする際、門出の儀式として、家の「判緒」をのこぎりで切り、持たせてあげるなんていう利用はいかがでしょうか。のれん分けならぬ、ハンコ分けです。日本に新しい伝統行事が誕生するかもしれませんね。
金太郎アメのように、ひたすら長く作ることで今までにない、とても“非常識なハンコの使い方”が生まれそうですね。
満員電車やタンスのすき間や離れた上司の書類にも役立ちそう。軽さに乾杯。
プラスチックの金型成型では決して生産できない方法で、ユニークなアイデアを実現。これぞ3Dプリンタならではのモノづくり!
実用上のメリットはもとより、想像力もかきたてられます。金太郎アメだと何処を切っても同じですが、この「判緒」だと何処を切ってもオンリーワンになります。また、ぐにゃりとした不思議な表面と複雑に奥まった断面のコントラストなど、見る人の感性を強く刺激する作品だと思います。
「ユーザーの好みで切る」という発想や、切り出す位置によって印面に個性が出るなど、なかなか思い付かないようなアイデアが盛り込まれています。このような、表面から見えない内部形状を作り込む際には、やはり3次元CADが生きてきますし、3Dプリンタでないと実現できないものでしょう。3Dデータならではの素晴らしい作品です。
実用部門のグランプリに輝いた判緒と激戦を繰り広げたのは、ボンクラーズ総長さんの「カニカマケース」です。
ご本人は、スマートデバイスケース部門で投稿されていたのですが、「カニカマはおいしいけど、スマートデバイスではない!」ので、事務局判断により実用部門で審査させていただきました。特に高評価を付けていたのが安齋肇さん、水野操さん、ねとらぼ編集部。それぞれ次のようなコメントをいただきました!
擬態(ニセモノ)が擬態(ニセモノ)に飾られることで、“ニセモノ×ニセモノ=ホンモノ”になる可能性を持つという、白も黒もない、グレイな新しい観念を生み出しそうですね。
ずばり、アイデアの面白さに感心しました。“商品化したくなる”という意味では、ナンバーワンと言ってもよいと思っています。
3Dプリンタで出力しているとき、人はなぜか黙してじっと造形を眺めているものです。
カニを食べるときもまた同じ。人はカニの前では言葉を失うものなのです。
そんな一場面を切り取ったコンセプトなのだと勝手に思うとともに、「何をやっているんだ?」という言葉を失った作品でもありました。
そして、カニではなくあくまでも「カニカマで我慢する」という面白くも悲しい現実を突き付けつつ、よく分からない説得力(本物のカニならもったいなくてケースなんて入れる前に食べるよね)を持った力作だと思いました。
その他、anap_plusさんの「SONY NEX-6用カメラホルスター」、Manabunさんの「Sun&Moonペンダント」、QRハンコプロジェクトの「QRハンコ」が最終審査対象に選ばれていました。
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