今回まで、合計4回に分けて解析エラーについて説明させていただきました。しかし、内容が多岐にわたりましたので、ここで注意すべき事項についてまとめておきたいと思います。なお、値の範囲規制については該当の記事を参照願います。
注:以下の順番に特に意味はありませんが、まずは回路図の見直しから始め、収束条件の変更は最後にしてください。
注:SPICE上では部品が破壊しないことも大きな特徴なのですが、逆に言うと“定格オーバーを見逃しやすい”ということでもあります。このため、設計者には結果の“V&V”以外にも設計余裕度に対する検証が求められます。
結局、得られた波形が正しいか否かを判断するのは設計者自身なのです。言い換えると、これらのチェックはいかに“設計者が回路を理解しているのか?”ということの証明にすぎないのです。
ですから、回路を理解した者が使えば“鬼に金棒”なのですが、“CAEツールの操作さえ覚えれば設計ができる”という考え方では、本連載の内容を正しく活用できるとは言えません。
SPICEの解説本の多くは「~学ぶ電子回路」や「分かる~」といったタイトルになっています。しかしそれらは「いかに結果を得るか」を目的にしており、得られた結果の正否まで述べているものはほとんど無いように感じられます。
もう少し“V&V”について論じた本があってもよいのではないでしょうか。
次回からは、SPICEの機能を実際の設計に適用した事例を通じてSPICEの活用方法を考えていきます。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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