会場の参加者からも続々と質問が出てきた。ここでは、登壇者らによる質問への回答を紹介する。
私どもが携わっている事例は100とか200というロットなので、現時点では大きな問題、クレームなどは起きていません。コールセンターを外注できるサービスもあるので、問い合わせ対応にはそういうところを活用してもいいのではないかと思います。ただ各自で保険などには入っておく必要があると思います。
プロトラブズは、試作や小ロットに対応しているので、保証の話は結構出てきます。会社としては、お客さまの指定通りに作る責任はありますが、作った製品がお客さまの意図通りに動くかまでは、責任が取れません。モノを作っている方々は全員リスクを考えているし、もちろん考えるべきですが、だからといって問題ばかりを考えていると、「大企業しかモノが作れない」ということになってしまいます。
売れるまでの苦労ってものすごく大きいので、売れてからやっとリスクの問題が発生するような気がしますね。
大抵、特許侵害がないかを調べた上で製品を出しますが、そこはある程度「えいや!」でやっているのが実情だと思います。実践者から話を聞くのもいいのではないでしょうか。自治体には特許振興課のようなサービスもあって、無料で相談に応じてもらえるはずです。
最近はソフトとハードが高度に連動したものが多く、特許の範囲がますます曖昧になっていますから、「先に製品を世の中に出した方が勝つ」という状態になってきていると思います。また製品自体に感性に訴えかける部分が増えてきているので、特許で守らなくても守れるのでは。
当社はWebサービスの一環として、射出成型の流動解析(クラウド上のサービス)を無償で提供しています。強度解析はないのですが……。実際、このような3次元の解析サービスは少ない現状ではないでしょうか。あるとしても、解析サービスの結果に基づいて製品を作った場合、その製造責任をサービス側は負うことはできない。責任を負えない結果をどこまで信用すべきかという問題も出てくるので、技術的に解析サービスの提供は可能でも、ビジネスとしてはどうかという判断になっているかもしれません。
最後に今回のディスカッションを受け、各氏からはメイカーズへのエールの言葉が送られた。
私が育ったアメリカでは訴訟は日常茶飯事です。まず行動を起こしてから、それに対する見返りとの関連性を考えて、訴訟を心配します。そうでないと何もできません。「モノづくりの民主化」のパワーは、市民全員が「何かができる」と感じること。そういったことをぜひ考えてみてほしいと思います。
質問の内容からも皆さんの意識とか進捗度が高く、2〜3年前と比べて日本中の動きも大きく変わっていると感じています。その中でわれわれは、日本のモノづくりの強みを皆さんと共有して、大きな流れ、大きな動きの中で、日本全体を一緒に盛り上げていきたいと思います。
Webサービスと、人との関係との両方で、より質の高いメイドインジャパンのプロダクトが生み出せます。ぜひ町工場と仲良くしていただければと思います。
数年前なら、「どうやって作るか」という質問が多かったのですが、いまは作ることは当たり前になってきて、「作った後はどうしようか」という質問が増えてきています。さまざまなWebサービスの登場によって、モノづくりを始めるのは楽になっていますが、始めてからは一つ一つ問題を超えていかなければなりません。でもその向こう側には、大きなプロジェクトの可能性もあるので進んでいきたいですね。自分たちが作ったモノが増えていった方が、世の中も面白くなっていく。いろいろなサービスを活用して新しいモノを作って、広めていけるといいと思います。
作れる環境は整ってきた。ならば、一歩を踏み出すときなのではないだろうか。そしてメイカーズがもっと盛り上がれば、もっと多様なサービスも登場するのではないだろうか。(次回に続く)
杉本恭子(すぎもと きょうこ)
東京都大田区出身。
短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。
MONOistでは、3Dプリンタ/3Dデータという“新たな文化の波”を牽引するとともに、日本のモノづくりの発展を応援すべく、3Dモデリングコンテストを開催いたします。詳しくは、イベント告知サイトをご覧ください。
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