東芝は、「第20回ITS世界会議東京2013」において、同社のリチウムイオン電池「SCiB」を搭載する電気バスを展示した。5〜10分で、容量の約80%まで充電できる超急速充電器に対応している。
東芝は、「第20回ITS世界会議東京2013」(2013年10月14〜18日、東京ビッグサイト)において、同社のリチウムイオン電池「SCiB」を搭載する電気バスを展示した。環境省の「地球温暖化対策技術開発・実証研究事業」のために開発されたもので、2013年7月から、東京都港区のコミュニティバス「ちぃばす」の芝ルート(1周17km)を、1日当たり6周運行している。
SCiBは、負極にチタン酸リチウムを採用することにより、他のリチウムイオン電池と比べて耐久性が高く、長寿命で、充電速度を高められるという特徴を備えている(関連記事:東芝が「SCiB」を車載用に展開、2次利用による価格低減も視野)。この電気バスは、日野自動車のマイクロバス「ポンチョ」をベースに、容量39.7kWh分のSCiBと電動システムを搭載しており、満充電状態であれば約40km走行できる。
電気バスへの充電は、5〜10分で、容量の約80%まで充電できる超急速充電器を用いる。超急速充電器の最大出力は160kWで、CHAdeMO規格に準拠した急速充電器の約3倍に当たる。電気バスと超急速充電器の通信は独自のプロトコルを用いているが、「高出力にするため独自拡張しなければならない部分を除いて、できる限りCHAdeMO規格に準拠するようにしている」(東芝)という。
超急速充電器の最大出力160kWを実現するには、高い入力電圧/電流が必要になる。しかし、この超急速充電器には容量が66kWhのSCiBモジュールが接続されているので、超急速充電を行う際には、系統電力とSCiBモジュールの電力を併用すればよい。環境省の実証研究事業のコンセプトでは、このSCiBモジュールに、電気バスで一定期間使用したSCiBをリユースする計画である。しかし、実証研究事業の当初は、リユースできるSCiBが存在しないので、東芝が定置型リチウムイン電池モジュールとして販売しているSCiBを用いている。実証研究事業を続けて、電気バスのSCiBの容量がある程度劣化した場合には、超急速充電器でリユースできるように33kWh分の空きスペースを用意している。
東芝の説明員は、「従来の電気バスは、大容量のリチウムイオン電池を搭載して夜中に満充電しておき、昼間は急速充電器などで時間をかけて電力を継ぎ足して、走行のための電力が不足しないように運用するというパターンが多い。しかし、SCiBと超急速充電器を使えば、燃料を給油するのと同じ感覚で充電できるので、電池の容量が少なくて済むし、運用も楽だ。電気バスは、中国をはじめ海外で利用が広がっているが、搭載している電池の容量劣化や、長い充電時間といった問題も顕在化している。このため、容量がほぼ劣化せず、超急速充電も可能なSCiBへの引き合いは極めて強くなっている」と述べている。
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