滋賀県も積極的な工場誘致を進めている。滋賀県は名神高速道路や東海道新幹線などが通り、大阪や名古屋はもちろん、東京からでもアクセスしやすい環境であることが利点で、数多くの工場が進出している。「もともとは名神高速が完成した際に関西企業が進出。地価が安い他、工業拠点としての集積化が進んでおり、生産地としての基盤が整っていることが強みだ」と滋賀県 商工観光労働部 企業誘致推進室 主任技師の藤原直樹氏は語る。
滋賀県には大小合わせて67にも及ぶ工業団地があるが、その分譲区画235のうち既に225区画は埋まっており、空きスペースはほとんどない状況だ。その中で新たに2015年から「滋賀竜王工業団地」の分譲を開始する予定だ。
また、環境領域、医療・健康領域の製品分野の工業拠点に対する助成金制度を用意しており、これらの産業分野の集積化にも取り組んでいくという。「円高是正の動き以降、国内での進出先を検討する動きは増えてきている。魅力を訴え、多くの企業を呼び込んでいきたい」と藤原氏は話している。
石川、富山、福井の北陸3県は共同でCEATEC JAPANに出展。港や空港が整備されている他、北陸新幹線の開業により、首都圏から「日帰り圏」になる利点を訴えた。また地震がほとんどなく、津波の被害も過去の文献で1度しか記録されていないなど、BCP(事業継続計画)の観点からの利点なども訴求する。
北陸電力地域は他地域に比べて電気料金が安い他、原子力発電所があるため関連の補助が受けられ、運用コストを下げられるという利点もあるという。福井県 産業労働部 企業誘致課 企業立地推進グループ 主事の山田雅之氏は「原子力発電所の稼働がどうなるか不透明な中、企業誘致により関連地域の雇用を確保していきたい」と意欲を示す。
その他、青森県は「青森中核工業団地」への企業誘致をアピール。青森市 経済部 雇用創出・企業立地課 企業立地促進チーム 主事の木立慎吾氏は「2015年までに函館まで新幹線でつながるので、地域的な強みを生かして誘致を進めたい。産業の集積化があまりないことから、最終製品の工場誘致は難しいと見ているが、部品などを中心に利点を訴えていく」と話す。
沖縄県の名護市や宜野座村は金融・情報特区である利点を生かし、コールセンターやデータセンターなどの誘致を推進。BCPへの対応で進出企業が増えているという。
これらの積極的な企業誘致の一方で、大規模な企業拠点を誘致するリスクも存在する。グローバル競争で事業の運営や再編などのスピードが重要視される中、事業の統廃合や買収・売却、拠点の整理などが急に発生するケースが頻発している。
「大企業の拠点に頼り切った構造にならないためにも、多くの企業を誘致してバランスを取る必要がある」と話すのは東広島市の産業部 産業振興課で主事を務める和田康平氏だ。東広島市は、中四国地域では有数の製造拠点地域で、マツダ関連の自動車関連部品および機器メーカーが多く進出する他、シャープの通信システム事業本部、エルピーダメモリの広島工場が立地している。
シャープやエルピーダメモリはここ数年経営問題が取りざたされてきたが「われわれの中でも危機意識はあった。進出企業に働きやすい環境を提供するとともに、数社に頼り切らない雇用環境を創出する必要がある」と和田氏は話す。東広島市では新たに2つの産業団地を開設。「新たな産業団地への企業誘致でバランスを作りだしていく方針だ」(和田氏)としている。
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