燃料電池自動車、実用化に向けて胎動。不可欠になる水素ステーション建設関連と思しき求人増加中ニュースからひもとくエンジニア求人動向

燃料電池自動車普及に必要なインフラとなる水素ステーションに関わるニュースをよく目にするようになってきました。転職市場においても、プラントや設備の設計・施工管理関連の求人情報が増えているように感じます。

» 2013年08月23日 10時00分 公開
[MONOist]
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本記事は人材紹介会社「メイテックネクスト」河辺真典氏からの寄稿です。



 次世代の自動車をめぐる取り組みとしては、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の話題が紙面をにぎわせています。その一方、着実に地盤を固めつつあると感じるのが燃料電池自動車(FCV)。今回は求人情報からうかがえるFCV関連の業界動向について触れてみようと考えています。

始まりつつあるのか、燃料電池自動車の普及に向けた歩み

 モーターショウやイベント、ニュースなどでFCVを見掛けることはあるものの、一般にはまだ普及していません。既に街中を走っているHVやEVと比べると、身近なものとは感じられない人がほとんどなのではないでしょうか。

 ただ、最近のテレビや新聞を注意してみると、FCVだけでなく、FCV普及に必要なインフラとなる水素ステーションに関わるニュースをよく目にするようになってきました。具体的な水素ステーションの建設計画が立ち上がり、従来の高圧設備に関しての法令を改善して水素ステーション用高圧設備に関する安全基準の適正化を図るなど、着々とFCVおよび関連インフラの整備に向けた計画が進行していることが伝わってきます。

 HVはガソリンスタンドでガソリンを購入すれば走ります。EVも家庭で充電できますし、その気になれば比較的簡単に充電ステンドを増やすことができます。ですが、FCVに必要なのは水素です。そもそも水素は市販されていないため、FCVを普及させていくためには、まず水素ステーションを建設していくことが必須であることは明らかです。

燃料電池自動車に不可欠な水素ステーション

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 水素ステーションは、水素の供給方法によって2種類に分類できます。高圧下で液体化された水素をタンクローリで運び、タンクに格納するオフサイト型。それにガソリンや天然ガス、LNGなど、従来の燃料や原料を運び込み、水素ステーション内で触媒を用いて水素を製造し、加圧して共有するオンサイト型です。オフサイト型はステーションへの輸送にかかるエネルギーのロス、オンサイト型は水素製造過程のヒートロスや水素改質率などが課題になっています。

 そして、オンサイト型の水素ステーションは、1施設当たり5億円以上は掛かるといわれています。ガソリンスタンドの建設費用が1億円ほどのようですから、非常に高額です。少しでも建設費用を抑えるため、例えば都市ガスを原材にした水素ステーションを新設するのなら、既存のガス供給体制を活用することを前提にした展開になると思われます。

水素ステーション建設の動向と各業界の思惑

 さて、そんな将来起こり得るかもしれない水素ステーションの建設ラッシュ。この動向に、どんな業界が関わってくるのでしょうか。

 水素はさまざまな燃料・原料から生成できるため、何を使ってつくるかによって、関わる業界が異なってきます。例えば、これまでガソリンを供給してきた石油ディーラーは、原油を元にした原材料からの水素生成を進めるでしょう。都市ガス業界はインフラとして普及している都市ガス・天然ガスをベースにした生成による供給により、新たな需要先としての期待を寄せているはずです。

 いずれの業界も機器メーカーとタイアップして水素ステーションプロジェクトを立ち上げ進めているのは事実です。自動車業界は環境対策としてエコカーを推進するのですが、FCVの普及については、原料を調達供給する業界から見れば、新たなビジネスチャンスとして普及を後押しする構図も見えてきます。

具体名は出さずとも水素ステーション関連と思われる求人は増加中

 水素ステーションの建設に関わる求人については、「水素ステーション開発・設計」など、具体的に名を打っているものは非常に少ないです。恐らく、プロジェクトは今まだ水面下での構想設計段階であり、具体的に名を打つ段階ではないためだと思われます。

 ただ、職種内容や業界を見ると、建設業界やプラントエンジニアリング会社が設備設計・施工管理の求人を寄せてガスプラント経験者を募集したり、計流器メーカーや配管などのプラント機器メーカーが積極的に設計者もしくはアプリケーションエンジニアを募集する、また触媒メーカーが材料開発エンジニアを募るなどの動きが活発です。これらは水素ステーションやFCVに関係する求人のように感じます。

 いずれの求人においても当てはまることですが、水素ステーション建設の経験者はごくわずかしかいません。経験者自体が少ないため、未経験者の方にも門戸を広げて募集している求人ばかり。キャリアチェンジを考えている人には、狙い目の求人分野といえるでしょう。

プロフィール

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河辺 真典(かわべ まさのり)

株式会社メイテックネクスト コンサルタント 統括マネージャー。

元生産技術のエンジニアとして5年勤務し、前職リクルートエージェントでエンジニアの転職紹介を8年経験した後、メイテックネクストでエンジニアの皆さまのさらなる転身のためにサポートしております。

エンジニアの皆さまの今までのご経験とご希望、それに時間軸を加えた3軸で、皆さまの転職を分析し解きほどいていきますと、今まで混沌としていた転職も、おのずと方向が見えてきます。

面談ブースで皆さまとお話しさせていただくことによって、そういったお話しを見い出せたらなと思い、日々仕事をしています。


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