世界で初めて直流給電システムに対応することとなったさくらインターネットの石狩データセンター。直流給電システムとそれに対応したサーバの研究開発をリードしてきたNTTデータ先端技術の担当者に話を聞いた。
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2013年3月13日、NTTデータ先端技術株式会社は直流給電システムとそれに対応したサーバをさくらインターネットに納入。同社が北海道で運営している石狩データセンターはデータセンターとしては世界で初めて直流給電システムに対応することとなった。直流給電システムで稼働しているサーバは19基で、同センターのサーバ群の一部でしかないが、今回の稼働実績を基に今後の展開が期待できる。NTTデータ先端技術で直流給電の研究開発をリードしてきたソリューション事業部の村 文夫氏に、直流給電のメリットと将来について聞いた。
「今、ITで扱うデータ量が爆発的に増えています。データを処理するには、大量のサーバを設置して運用するデータセンターが必要ですが、データセンターの給電システムにはUPS(無停電電源装置)が組み込まれています。地震や落雷などによる不意の停電でもシステムが途切れずに動くように、データセンターには自家発電機が用意されています。その発電機が動くまでの時間もサーバが落ちないようにバックアップ電源であるUPSがあります」
UPSは大型の電池だ。普段から充電しておく必要があるため、交流を直流に変換し、再び交流に戻す。変換された交流は整流器を通して波長を整えてからサーバへと送られ、サーバ内で再び交流から直流へ変換される。この変換の際に電力の一部は失われ、一般的なデータセンターの変換効率は70〜80%止まりだ。
「われわれのHVDC(高電圧直流給電)は交流から直流に変換してバッテリーに充電したら、その後は交流に変換しない仕組みです。途中の切り替え機も分電盤での変圧も要りません。ただサーバ用に電圧を12V(ボルト)に変換するコンバータは必要です。直流から交流、交流から直流への変換が不要になるため、変換効率は90%になります。最新のデータセンターに比べて約10%、古いデータセンターであれば30%前後の効率化が見込まれます」
直流給電に省エネ効果があるのは分かるが、なぜ今、直流給電なのか? そもそも家庭用電源がすべて交流なのはなぜなのか?
「製品の品質を担保するには、まずは基礎部分、アクチュエータの機構系の性能が大前提となります。ショーワの強みである機構部分の性能・技術を土台に、電子制御化することで高機能かつ高性能な製品を生み出すことができると考えています」
「電気が発明された当初、電気の供給を直流でやるべきか交流でやるべきかの議論がありました。結局、発電所の生み出す大電力を遠くまでロスなく送るには、交流の方が適していることが分かり、家庭には交流で給電されるようになります」
家庭で使う電圧は国によって異なるが、およそ100〜200Vが使われる。最初からその電圧で送電したら、送電ロスによって電力はほとんど失われてしまう。そこで、発電所の大電力を変圧所で順番に変圧し、電圧を落していく。直流に比べ、交流はトランスを使って簡単に電圧を変えることができるため、交流が選ばれたのだ。
「当時は家庭の電化製品といっても電灯ぐらいですから、交流で良かったんです。ところが今の時代、パソコンにしても家電などの電化製品にしても内部はすべて直流で動いています。トランジスタ回路が直流で動いているんですね。今や交流で動くものを探す方が難しい。電灯もLEDに替わっています」
つまり家庭内でも直流給電を行った方が効率がいいのだ。
「もともとのHVDCでは365Vという高電圧直流をサーバに給電し、サーバは380Vで動くようにしようと考えていました。しかし380Vの直流は、他のデバイスで使うときに変圧が必要だったり感電や放電の問題があり、使いにくい。私たちは2005年からHVDCを研究していますが、そうした直流の持つ問題については解決策を用意しています。石狩データセンターではサーバを12Vに設定しました。マザーボードが12Vで動いているからです。コストもできるだけ安いほうが普及しますので、12Vであればサーバの電源部分だけ入れ替えれば済みます。構造もシンプルなので、信頼性も高い」
現在、同社は世界中のベンダーと協力しながら、HVDCの国際標準化を進めている。
「東京大学の江崎浩教授が進めている『東大グリーンICTプロジェクト』のワーキンググループに入れていただき、国際標準化を進めようとしています。家庭でHVDCをやるには、冷蔵庫や洗濯機もHVDCに対応しなければならず、標準化技術が必要になります。家電メーカーも研究はされていて、HVDC対応家電をたまに展示会に出品されています」
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