もう1度技術者として活躍したいベテラン技術者にとって、受け皿になり得るのが中小企業への転職。ただ甘い気持ちで転職していては、1年持たずに退職してしまう恐れも。
本記事はヘッドハンティング会社「キャリア・デベロプメント・アソシエイツ(CDA)」田辺晃代表取締役からの寄稿です。
過去に当社が転職を支援させていただいた技術者の中に、大企業でISO認証関連の業務を担当されていた方がいました。その方は60歳を過ぎていて、所属していた大企業の中では既に一線を退いていました。
けれど、「技術者として、もう1度必要とされたい。もう一花咲かせたい」という思いを持たれていました。そこで当社がご紹介したのは、認証関連の業務経験者を求めていた中小企業です。戦力として求められる職場をご紹介できたことで、その方にとっては技術者としての第2の人生が始まりました。
大手メーカーで実績も残してきたのに、閑職に回されてしまった――。そんな気持ちでくすぶっているベテラン技術者の方には、中小企業へ転職するというのも1つの選択肢です。うまくマッチする企業へ転職できた場合には、任される業務範囲が大手メーカーで働いていたころよりも一気に広がります。「大変だけどやりがいのある仕事をしたい」と望んでいる方は、ぜひ検討してみてください。
ただ、大手メーカーから中小企業への転職する際には、生半可な覚悟でいては失敗します。何も準備せずに転職したら、50%の方は1年と持たずに退職することになってしまうでしょう。
大手メーカーから中小企業への転職にはどのような心構えが必要なのか。いくつかポイントをご紹介します。
中小企業に転職すると、給料はまず下がります。また中小企業にとって、一流の大学を卒業した人材を採用するのは至難のことです。一緒に働くことになる技術者のレベルについては、過剰な期待を抱いてはいけません。
中で働いていると気付かないかもしれませんが、大企業は非常に組織が整っています。会議をして指示さえ出せば、若手が業務を振り分けてプロジェクトを進めてくれます。協力会社だって頼んだ仕事を優先して対応してくれます。
ですが中小企業で働いていると、さまざまな仕事を自分で対応していかなくてはいけません。技術者の業務範囲外の仕事も増えてくることでしょう。さらに協力会社の反応も悪くなります。大企業から依頼するのと違って、売上の小さな取引になりますから、協力会社からの色よい返事は期待できません。
大企業から中小企業に転職していくと、「偉そうなやつが来た」と非協力的な態度を取られがちです。そんな雰囲気の中で、偉ぶって「前の会社はこうだったから、こう変えよう」と指示しても、誰も協力してくれません。そのうちに古株社員から社長に苦情が届き、最初は協力者だった社長も後ろ盾になれなくなり、会社から弾き出されてしまいます。
それでも大企業出身者ということで、社長からは大きな期待が寄せられます。社内改革は進めていかないといけません。古株社員たちと正面からぶつかるのではなく、1:1の人と人との関係を築き、根回しをしながら少しずつ社内を変えていく。そうした姿勢が求められます。
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