東日本大震災以降、防災・減災への関心が高まっている。南海トラフ巨大地震が懸念される中部地区で、防災・減災をテーマにした展示会が初めて行われた。注目の展示をピックアップして紹介する。
中部地区初の防災・減災をテーマにした展示会「中部ライフガードTEC2013 防災・減災・危機管理展」が名古屋のポートメッセなごやを会場に2013年5月24、25日の両日で開催された。東日本大震災以降、防災・減災への関心が高まっているが、特に中部地区は南海トラフを震源にした巨大地震の発生が懸念されており、防災・減災に向けた取り組みが喫緊の課題となっている。
今回の展示会では、さまざまな災害リスクに対する最新の製品・技術・サービスなどが一堂に会した。本稿ではその中から注目の展示をピックアップしてお届けする。
東日本大震災では、多くの人が津波の犠牲となった。地震発生から最短では数分後に到達するといわれる津波に対して、避難する時間がない沿岸部の地域では“究極の逃げ場”として「津波シェルター」が注目されている。今回の展示会でも数多くの企業がさまざまな津波シェルターを提案していた。
ミズノマリンのブースでは、25人乗りの救命艇シェルターを展示していた。大型船舶などに装備されている救命艇をベースにしたオレンジ色のシェルターは、さながら“ミニ潜水艦”のよう。ディーゼルエンジンも搭載しているので、沖に流されてしまっても自力で岸までたどりつける。防水性能はもちろんのこと、海上火災が起こった際にも耐火航行が可能な耐火型仕様も用意されている。50人乗りの大型タイプもラインアップ、価格は25人乗りが700万円から、50人乗りが1000万円からとなっている。
「津波が警戒されるハザードマップエリアに立地する企業や幼稚園/保育園などからの引き合いが多い。外装は塗り替えられるので、企業の屋上や園庭などに置いておき、いざという時の備えにしてもらいたい」(ミズノマリンの担当者)。
鋼鉄製のシェルター「伊勢の方舟」を展示していたのは、愛知県豊田市の伊勢産業。シェルターの外装に鋼鉄を採用しており、加工しやすさと漂流時の浮遊物からの耐衝撃性を高めている。2人乗り用から50人乗り用まで人数や設置場所によって形が選べるのも特徴。鋼鉄製でも浮力は非常に大きく、実際の海上で17時間漂流させるといったテストも行っているという。内側には断熱材を使用し、海上火災が発生しても内部の温度上昇を防ぐ。同社はもともと自動車工場の設備保全で騒音対策や熱炉対策を行ってきたことから、密閉や断熱の技術をシェルター作りに生かしているという。価格は2人乗りで44万円から(下の写真のシェルターは12人乗りで200万円)。
トノクラフトが展示していた津波シェルター「プカプカ」は、UFOのような丸いユニークな形状が特徴。同社がサーフボードや小型船舶などで培ったFRP(繊維強化プラスチック)加工技術をシェルターに生かしている。50kgの重りが底部に設置されており、水上で起き上がりコボシのようにバランスをとって転覆を防ぐ。4人乗りで価格は85万円。
大分県のポンドが紹介するシェルターは、美しい球体形状の「ライフアーマーNEO」。直径120cmとコンパクトながら大人4人が搭乗でき、FRP製で重量が約80kgと非常に軽量だ。球体形状を採用することで、外部からの衝撃や圧力を分散させることができるという。4人乗りで49万8000円と低価格なのも特徴。
「FRP製なので屋外に置いて風雨にさらされたとしても錆びることがない。一家に1台の設備としても負担の少ない価格設定にした。ファミリー/個人向けとして庭先やマンションの屋上などでの設置を想定している」(ポンドの担当者)。
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