最新技術が追加されるたびに、制御システムのコード量が増加する自動車の組み込みシステム。プログラマーの力技頼みだった従来の開発手法から、オブジェクト指向、モデルベースへと常に改善が図られています。
本記事は人材紹介会社「メイテックネクスト」河辺真典氏からの寄稿です。
前回、組込みシステム開発技術展(ESEC)の基調講演で、自動車業界で進められている交通事故死を減らすための取り組みについて触れてみました。今回は基調講演で語られたもう1つのテーマである自動車を制御するシステムに注目。最新技術の搭載によって、自動車の制御システムが非常に大掛かりなものになっている中、開発環境はどのように変化・変革しているのか、取り上げてみたいと思います。
自動車の制御システムを開発している方には周知のことかと思いますが、制御システムのコード量は年々増加。2015年には1億行になると言われています。
従来の制御システム開発は、車種ごとにそれぞれ一から開発し、ハードと合わせて組み上げた後、最適化を図ることで製品化していました。
それが1990年代後半からは、徐々にコンポーネント指向の開発にシフトしました。製造のグローバルシフトが進み、車種が増加。同じようなシステムの開発を同時並行で統制なく進めていては、間に合わなくなりました。そこで過去のプロダクトを再利用することで、開発工数を削減しようとコンポーネント指向の開発が試みられるようになりました。機能別・階層別にコンポーネント化し、組み合わせて使おうという発想が広まったのです。
2000年代に入るとさらに進化し、モデルベースの開発が試されるようになりました(参考記事)。まずはワークステーション上で制御対象をモデリング。制御コントローラを設計してから、制御モデルを使ってシミュレーションを実施、コントローラを検証した後に実装に着手する開発手法です。
さらに直近では、制御をさらに抽象化し、プラットフォームを定義することで開発の重複によるロス低減や、再利用によるミスの低減などが図られていると語られていました。プログラマーの力技によるシステム開発だったのが、より本質的な自動車の機能最適化を目的としてシステムを考えること(アーキテクチャを考えること)に、資源を集中できるようになってきているのです。開発スタイルは日々進化していると言えるでしょう。
またこれらの取り組みは、日本の自動車業界横断で連携しています。組み込み制御における業界標準を日本発で世界に広げる取り組みを進めているとのことです。
自動車の制御システム開発。自動車に興味のない方にとっては地味な印象があるかもしれませんが、その開発手法に注目してみると、大きな変革のまっただ中にいることが分かります。
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