富士通セミコンダクターは、CPU/GPU性能を強化した新しい高性能グラフィックスSoCを製品化した。車両の全周囲を自由な視点で3D映像表示する「全周囲立体モニタシステム」を高精細に映し出す他、同システムに接近物検知機能を追加できるまで性能を高めた。
富士通セミコンダクター(以下、富士通セミコン)は2013年5月16日、CPU/GPU性能を強化した新しい高性能グラフィックスSoC(System on Chip)「MB86R24」を2013年8月からサンプル出荷すると発表した。車両の全周囲を自由な視点で3D映像表示する「全周囲立体モニタシステム」を高精細に映し出す他、同システムに接近物検知機能を追加できるまで性能を高めた。同社は「2014年から実用化されるサイドミラーレス自動車を実現できる製品」としている。
富士通セミコンは以前から、ディスプレイにグラフィックスを映し出すための画像処理LSIであるグラフィックスSoCを主に車載用途向けに展開してきた。今回、発表した製品は同社グラフィックスSoCの第3世代品に当たる。
従来世代品はシングルコア構成だったCPUを、ARM Cortex-A9コア2個のデュアルコア構成にした上で、ARM Neon SIMDエンジンを備え、CPU性能を約2倍に引き上げた。3Dグラフィックスエンジンは新たにImagination TechnologiesのPower VR SGX543を採用した。富士通セミコン独自開発の同エンジンを搭載していた従来世代品に比べ、「性能は約5倍向上している」(同社)という。2Dエンジンは、従来通り富士通セミコン独自エンジンを使用している。
映像を出力するディスプレイコントローラは3系統を備え、うち2系統は1920×720p、1系統は1920×1080pの解像度に対応し、高精細化を図っている。カメラなどからの映像入力も4入力から6入力に拡張している。
これらの性能強化により、グラフィックスSoCとして果たせる機能も増加した。例えば、従来世代品から対応し、SIM-Driveの電気自動車(EV)「SIM-CEL」(関連記事)などにも採用される富士通独自の全周囲立体モニタシステム「OMNIVIEW」への対応も、さらに強化。映像入力が4本から6本に増えたことで、トラックなどの大型車でも高精度の全周囲監視が行えるようになり、表示も高精細化できる。カメラ撮影から映像表示までの遅延時間も「車載機器メーカーが要求する100msを大きく下回る33msの低遅延を実現できている」(同社)とし、走行支援機能として使用できるという。さらに同社では「より空気抵抗の少ない自動車の実現に向け、サイドミラーをカメラに置き換えるサイドミラーレスシステムが検討され、まもなく同システムの仕様などが規格化される見込み。新製品とOMNIVIEWの組み合わせで、規格に沿ったサイドミラーレスシステムに対応できる」とする。
富士通セミコンは、新製品向けに新たに接近物検知機能を実現するミドルウェアも用意している。全周囲立体モニタの表示と同時に接近物を知らせる警告を表示するといったシステムが可能になるという。
全周囲モニタシステム用途以外にも、車載ディスプレイ制御システムなどに応用可能だ。自動車のメーター部をディスプレイに置き換える「メーターディスプレイ」をはじめ、ヘッドアップディスプレイ、センターディスプレイといった最大3つの車載ディスプレイを統合制御することもできる。
富士通セミコンでは、「スマートハウスにおけるエネルギー監視モニターや、建物周辺を全周囲で監視するセキュリティシステムなど車載以外での応用も見込んでいる」としている。
新製品のサンプル価格は5000円(税込)。2015年からの量産を予定している。
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