「やりたいこと」「やるべきこと」「やっていること」が一致する仕事に就け――SIM-Drive 清水浩名誉教授著名人キャリアインタビュー(3/3 ページ)

» 2013年04月22日 13時00分 公開
[MONOist]
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「やりたいこと」「やるべきこと」「やっていること」を一致させよう

 今では自分の「やりたいこと」が車作りであって、地球温暖化やエネルギーの問題を抜本的に解決するためにEVの研究を進めることが「やるべきこと」だと感じ、実際にその仕事を「やっている」のだと語る清水教授。読者に向けても、「やりたいこと」「やるべきこと」「やっていること」が一致する仕事に就くよう助言してくれている。


photo 清水教授が手掛けた電気自動車(EV)、上から「Eliica」「SIM-LEI」「SIM-WIL」「SIM-CEL」

 「私の場合はその3つが一致したのがこの仕事です。EVの会社と言えば、普通は車を作って売るものですが、われわれはさまざまな技術を開発して、その技術を使いたい企業に技術提供することを事業にしています。しかも誰かに頼まれて研究開発するわけではなく、われわれが必要だと感じた技術を研究し、生み出した技術を『使ってくれ』と言える会社であろうとしています。この会社が私の思惑どおり上手くいけば、EVの普及が早まるはず。だからこの会社が上手くいくことを願っています」

「これから地球は明らかによくなる」と清水教授が考える理由とは

 お家芸のモノづくり産業で新興国に押され、国内では大震災に原発問題と暗い話題が多い。けれど清水教授は意外にも「これから地球は明らかによくなる」と語り、次のようにその理由を説明している。

 「『これから地球は悪くなる』とほとんどの学生が考えていることでしょう。ところが、これから地球は明らかによくなります。20世紀と21世紀を比べると、20世紀は幸せな時代でした。十分なエネルギーが使えていましたが、享受できていたのは地球人口のわずか1割ほど。世界の9割の人々は、日々の食料を得るための生活で一生を終えていました。それが21世紀には、世界中のあらゆる人が裕福にエネルギーを使うようになります。そうなれば、エネルギーを有効に使える技術が重宝される時代になるだろうと予想できます。

 そんな時代を支える基本的な技術を考えると、エネルギーを生み出すのは太陽電池が中心になるでしょう。車はEVに替わります。そういった21世紀を支える基礎的な技術は、すべて日本にあって、日本が世界で一番進んでいます。リチウムイオン電池と、モーターを効率いく回すために必要なネオジム磁石は日本人の発明で、これを実用的に使う技術は日本が一番です。太陽電池はアメリカ人が発明しましたが、実用的に使えるようにしたのは日本人です。それだけのポテンシャルを持っているのが日本人なんです。

 これまでエネルギーを十分に使えていなかった人がエネルギーを使うようになり、マーケットが10倍に広がる中で、どれだけ新しい技術を開発できるのか。まだまだ大きな可能性が残されています。そんな素晴らしい社会が、これからみなさんの手で作っていける時代なんですよ。これからの地球、これからの日本は明るいのです」

プロフィール

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慶應義塾大学 名誉教授
株式会社SIM-Drive 取締役ファウンダー
清水 浩

1947年、宮城県に生まれる。東北大学工学部応用物理学科を卒業後、同大学院工学研究科博士課程にまで進む。大学院を出た後、環境庁の国立公害研究所(現・環境省国立環境研究所)に入所。1997年から慶應義塾大学環境情報学部教授 兼 同大学院政策・メディア研究科委員となり、環境問題の解析と対策技術の研究を進めている。
過去30年間で14台以上の電気自動車を開発し、2009年から株式会社SIM-Drive代表取締役社長、2013年4月より同社取締役ファウンダーを務める。
主な著書に『脱「ひとり勝ち」文明論』(ミシマ社)、『温暖化防止のために 一科学者からアル・ゴア氏への提言』(ランダムハウス講談社)など。


写真撮影:門脇 勇二

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