ICの消費電力について考えてみます。ICには必ず電源ピンとグランドピンがあり、これらは電源ラインとグランドラインに接続されています(図3)。
そして、この電源ピンとグランドピンとの間には電流が流れています。電源電圧Vと流れる電量Iの積がこのICの消費電力Wになります。
W=I*V(単位:W)
また、V/Iの値をこのICの内部インピーダンス(インピーダンス)Zと呼びます(図4)。
Z=V/I(単位:Ω)
ここで、ICの電源Vは定電圧電源に接続されているので、常に一定です(実際はSSOノイズのため、多少の変動はありますが、その変動は0.1V以下の小さなものです)。
ICの消費電力は常に一定なわけではなく、内部の回路の動作に応じて常に変化しています。ICに流れる電流が大きくなれば、Vは一定なので、消費電力が大きくなります。ICに流れる電流が変化するということはICの内部インピーダンスが回路の動作状況に応じて変化しているからです。
電力はエネルギーですから、ICで消費されたエネルギーは何らかの形でICから放出されています。一部のエネルギーは電気信号として、他のICに送られます。しかし、電気信号のもつエネルギーは比較的小さいので、これだけでは、ICの消費電力のほんの一部しか使いません。さらに、普通、ICは出力と同程度の信号を他のICから入力していて、電気信号として出力したエネルギーと同程度のエネルギーを電気信号として入力しています(図5)。しかし、信号のエネルギーはICの消費電力全体から見ると、非常に小さな割合を占めるに過ぎません。
電気信号のエネルギーのごく一部は電磁放射エネルギーとなったり、終端抵抗や配線の損失で熱となったりして消費されます。ICで消費されるエネルギーの大部分は熱エネルギーになってICから放出されます(図6)。現在、特に高密度実装を行っている携帯電子機器では、電池の持ちも重要ですが、低温やけどの問題など、熱対策にも大変な努力をしています。
ICパッケージは熱対策や電気特性の問題を解決するため、非常に高機能で高価なものになり、IC価格の大きな部分を占めるようになってきています。また、大きなヒートシンクは空気の流れる経路の確保とともに機器の容積を増大させますし、ファンはその大きさだけではなく、ファン自体が電力を消費しますし、騒音のもとになります(図7)。
携帯機器では、ファンなどは使えず、熱設計は重要な設計項目となっています。この熱の問題は、小型携帯機器だけではなく大規模なサーバでは、機器の冷却のために大きな電力を使い、省エネの問題が大きな問題になっています。
ICの消費電力を削減することにより、電池の動作時間を延長するだけでなく、高価な熱対策の必要もなくなり、小型軽量化と低価格化まで実現できるようになります。
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