グローバル企業として生き残るには――ボッシュ栃木工場に見るニッポンクオリティ小寺信良が見たモノづくりの現場(2)(2/5 ページ)

» 2012年11月29日 10時30分 公開
[小寺信良,MONOist]

等身大の教育

 栃木工場の運営方針は、『納入クレーム/工程廃却"ゼロ"』だという。もっとも、このような目標スローガンは、表現は変われど、どの職場でも見られるものである。だが栃木工場では、現実にこれを達成しつつある。

 この工場の出荷数量は、月産でABS/ESCユニットが18万3000台、ホイールスピードセンサー64万8000本、吸気圧センサー26万個にも上る。これらの製造において、最長で48日連続不良品なしという記録を達成した。

 このような実績の背景には、もちろん多くの改善や取り組みが存在するが、3つの合言葉に集約できるという。

  • 大きな声であいさつをしよう
  • キチンとした服装をしよう
  • 5S/6Sの感覚を磨こう

 「5S/6S」とは、清潔、しつけ、しつこく、整理、整頓、清掃の6つを表わしている。ぱっと見は小学校の標語のようだが、これらの活動が職場の快適性を維持するポイントであるという。職場が快適になれば、労災もなくなり、製造不良もなくなっていく。

 「本社からは、当然もっと難しい取り組み目標が課せられているが、それらの目標を社員全員が理解し得るわけではない」と、工場長の榎本正志氏は言う(図2)。これは厳しいようだが真理だ。本社からの目標をシンプルに、誰でも理解できる形に翻訳すると、上の3つに集約される、というわけである。

図2 ボッシュ栃木工場工場長の榎本正志氏

不良品箱がないのはなぜ

 実際に工場内の取り組みを見学して感じたのは、さまざまな問題点の"見える化"にこだわっているということだ。例えば不良品箱を撤去してしまったこと。不良品がない状態が標準であるという考え方だ。不良品箱があると、中に不良品があってもなくても、近づいてのぞきこんでみるまで分からない。だが本当に不良品があったときだけ箱が出されることで、みんなが関心を持って見に来るようになる(図3)。

図3 ふだんは撤去されている不良品箱 不良品箱の後ろには「不良発生の記録」と書かれた板がラインごとに用意されていた。(クリックで拡大)

 工場長専用お掃除セットも、面白い取り組みだ(図4)。月に1回抜き打ちで、工場長自らが掃除道具を持ち、ライン内を掃除する。そこで収集されたゴミを、ビニールに入れて展示している(図5)。

図4 工場長専用お掃除セット
図5 収集したゴミは日付ごとに展示

 これを続けることで、次第にゴミがなくなっていき、最初はほうきとちり取りだったものが、最近では「コロコロ」でなければゴミが拾えないレベルになったという。

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