シリコンでできているICチップにスルーホールビアを開けるのは、PCBにスルーホールビアを開けるのとは、使う技術も難易度も異なります。
薄くて硬くもろいシリコン基板に対してドリルでの穴あけは行えません。また、200μmとか300μmの穴は、ICチップに対するスルーホールとしては、あまりにも大きすぎます。
現在、多くの会社が、安価で安定したTSVの量産化技術を開発しようとしていますが、まだ研究・試作段階で、定番の標準的な技術は確立されていません。
ここでは、これまでに発表されている一般的なTSV技術の概略を紹介します。
シリコン基板は強度を保つためには、ある程度の厚さが必要となります。しかし、小さく深い穴を開けることは、技術的にも困難ですし、時間もかかり、効率的ではありません。そこで、TSVはある程度厚いシリコン基板に対し、必要な深さの穴を開けた後、穴の開いていない部分を研磨して、薄い貫通ビア開いたシリコン基板を作る方法が一般的です。
あらかじめシリコン基板表面に配線パターンを作ってから穴を開ける方法と、はじめに穴を開けておいてから基板表面にパターンを作る方法の両方が提案されています(図7)。
シリコン基板に穴を開ける方法は、プラズマ放電を利用したドライエッチングが一般に使われます(図8)。ドライエッチングは非常に微細な加工が可能で、数十μmの穴あけ加工が可能ですが、穴あけ速度はそれほど速くはありません。穴は貫通させず、必要な深さまでしか開けません。この穴あけの速度と穴径、歩留まり、信頼性がTSV実用化の大きな課題です。
穴あけ後、穴の導通処理と、必要ならば表面層の配線加工を施します。
今度は、基板に表面から基板を補強し、シリコンの裏面を穴が貫通する厚さまで薄く研磨します(図9)。
表面から基板を補強する前に、実装するICチップをあらかじめ実装しておいて、実装した状態で、シリコン基板を研磨する方法もあります。研磨が終了し、ビアが貫通した後、基板裏面にバンプを作成します(図10)。
現在、ボンディングワイヤは30〜50μmほどの太さがあるので、TSVは同程度の穴径となり、パッドピッチも同程度が可能となります。つまり、Iチップの配線部の外側にパッド部をレイアウトすれば、少しのダイ面積の増大で、全てのパッドをTSVとして作成できることになります(図11)。
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