自動化を過信せず、人だからこそ作り出せる付加価値を大事に! 後編では、金型設計の中でも面倒くさいエジェクタピン設計の自動化を紹介する。また同社のユニークな新人研修についても取り上げる。
前編に引き続き、山形カシオ(山形県東根市)の金型設計・製造の自動化について紹介していく。記事後半では、同社が2005年から始めた、新卒社員が「楽しみながら、苦しみながら」取り組む擬似的な製品開発プロジェクト(新人研修)にも触れた。
製品を金型から取り出すためのエジェクタピンの設計は、金型設計全体のフローに占める割合が大きい。よって自動化が大きく効いてくる箇所とも言える。しかし、このフェーズは、半自動となる。
エジェクタピン設計は、設計者自身が考えるべき箇所と、標準化・自動化して構わない箇所に分別できる。例えばエジェクタピンを当てる位置は、製品の体裁や機能に大きく左右されるが故に、自動化は困難なので、設計者が判断して3次元モデルに指定する。それに基づいて、ピンの配置や種類の選定などは自動で計算させる。
まず丸ピンと角ピンを自動選定して配置し、次に割線に合わせた角ピンのフィッティングも実行する。その後は、エジェクタピンの先端形状を決めていく。
最近の筐体は3次元形状をしていて、かつ薄肉傾向である。ピンの形状もそれに沿わせながら、押すときに負担を掛けない形状とする。最適な先端形状を望むなら、おのずと3次元形状になってしまう。そのような形状の場合、エジェクタピンは標準品では対応できず特注となるため、高価になる。
コストを落とすためには、エジェクタピンの先端形状は極力平面に近似させて見立て、できる限り標準品で対応することが望ましい。ハイネットモールドは「平面近似判定アルゴリズム」を利用して、平面近似を自動計算し、標準品を自動選定する。
従来、エジェクタピンの先端形状においては、設計者が標準品の候補1本1本を検討していた。検討に収拾がつかない、あるいは設計する時間がない場合は、特注品を発注するしかなかった。先端形状の平面近似が自動化したことで、これまでの心理的・作業的な負荷が大幅に減り、多くの設計者が喜んだという。
射出圧に対するエジェクタピン強度(座屈)も自動計算する。NG箇所は、画面の3次元モデルにハイライト表示してくれる。その対策は、場合に応じて多種多様であることから、設計者が判断するようにしている。座屈の自動計算のロジックについては、下の図を参照してほしい。
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