業務改革と一体となった支援活動に乗り出しているのは、図研だけではない。展示会の会期直前に、富士通、NECがこぞって、業務プロセス改善支援サービスなどを発表している。ソフトウェアベンダーであると同時に、機器メーカーとしての側面を持つ各社が、自社のノウハウやサプライチェーンを外部に開放するという新しい取り組みとなる。
いずれも、自社グループ内のモノづくりを知りつくしたベテラン人材のノウハウを伝授しようというものだ。
富士通の場合は、グループ内のサービスやノウハウを横断的に展開するソリューション提供を推進しており、そのための組織改編も進んでいる。業種・業態ごとに細かく切り分けたソリューション展開を進めているのが特徴だ。
富士通は、自社のモノづくりプロセスを「FJPS」と命名して体系化、さまざまな現場改善の仕組みと併せて提供するとしている(関連記事)。また、デジタルプロセスと共同で、ISO26262対応のノウハウ提供も進めている(関連記事)。こちらは富士通セミコンダクタなどの富士通グループ企業が推進しているISO26262対応の取り組みを体系化して、他の企業向けに展開するものだ。既に富士通セミコンダクタで実践している内容である。
一方のNECは、自社の製品開発ノウハウを基にしたコンサルティングサービスと併せて、調達支援やサプライチェーンの資産共有など、自社で構築した仕組みそのものの提供を進めるという(関連記事)。
NECが自社で持つ倉庫や購買ネットワークも活用し、企業ごとの調達コスト削減などにも深く入り込んだサービスを展開していくという。
NECは、先述したコンサルティングサービスの他に、Obbligato IIIとObbligato for SaaSを並べて展示していた。
Obbligato IIIは、日本の組み立て系製造業に多く採用されているPDM製品。化学物質情報管理ツールである「ProChemist」などとの連携も可能だ。
Obbligato IIIのポイントは、システムの構造が切り分けしやすく、SaaSサービスとの連携が考慮されている点だ。アーキテクチャの変更はObbligato IIで実施されており、IIのユーザーであれば比較的スムーズに移行できる(関連記事)。
機能モジュールごとに切り分けができていることから、一部を自社内のサーバで運用し、一部をSaaSサービスで運用する、といったハイブリッドな運用にも対応しやすい点が特徴になっている。
「Obbligato IIIの販売は好調。システムの乗り換えに際して、高度化を狙うだけでなく運用のスリム化にも貢献している」(NEC 共通ソリューション開発本部 PLMコンサルティンググループ シニアマネージャー 松原芳明氏)
一方で、低価格で提供するSaaS版は同社にとってもチャレンジとなる取り組みだ。SaaS版は、きめ細かなカスタマイズは難しい部分もあるが、同社の「ベストプラクティス」をそのまま利用でき、アップデートなどのわずらわしい作業もユーザー側には必要がない。何よりも低価格で、かつ、運用コストを外部化できることが利点となる。
「低価格で利用できるSaaS版なら、いままでPDMの導入をためらっていた中小企業でも利用しやすいはず。日本にはまだまだ技術力のあるモノづくり企業がたくさんある。大規模なPLMシステムは高価で手が出なかったという企業でも、月額で、低価格で利用できるSaaS版で、必要なサービスだけを利用すれば大きな投資なく、最新のシステムを利用できる。特に環境法規制対策など、情報の更新頻度が高くメンテナンスが必要なものは、自社内で完結して対応することが難しい領域。こうした部分だけでも外部ツールで対応すれば、業務は楽になるはずです」(同)
富士通が、設計・製造環境の効率化を目指して高度化しているのが「エンジニアリングクラウド」。単なる仮想デスクトップとして以上のパフォーマンスが期待できるソリューションといえる。エンジニアリングクラウドでは、仮想ワークステーションを作業環境とし、クライアント側はスレートPCのような低スペックマシンでも十分に動作できる点が特徴。巨大なCADデータであっても、独自開発の軽量化技術「RVEC(レベック)」を使って、必要な情報を選別して送信できる利点がある。
仮想デスクトップ環境であることから、どこからでもアクセスし、そのまま作業を進めることが可能だ。また、原則としてどのようなソフトウェアであってもライセンスなどの問題がクリアされていれば、仮想デスクトップ環境で動作させられる。例えば、作業環境を離れた場所でのデザインレビュー会議などでも、直接設計図面を閲覧しながら議論できるという。
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