電動モーターと発電機のハウジングは、外観はガソリンエンジン車のトランスミッションケースのように見える。このハウジングの上に取り付けられた液体冷却式インバータモジュールを介して、バッテリーの電力を駆動モーターに供給する仕組みだ。このモジュールにつながるオレンジ色の高電圧ケーブルは、保安用リレーを含む遮断機構を備えている。さらに、モジュールのカバー自体も保安用の遮断機構として機能する。
Scott-Thomas氏によると、このインバータモジュールに収められた電子回路は、まさにボルトの頭脳と呼ぶべきものだ(図3)。日立製のボードには、Freescaleの32ビット車載マイコン「Qorivva」が4個搭載されている。Scott-Thomas氏は当初、ボードの面積が大きいことに注目したが、それは将来に回路を変更したり追加したりできるようにする狙いがあると分析している。
これら4個のマイコンのうち、1個はシステムの監視/管理を担うスーパーバイザーとして機能する。車体とホイールの速度の他、加速度(アクセルペダルの状態)、ブレーキ状態、バッテリー状態などを入力情報として、最も効率的な条件を判定する役割を果たす。ここで判定する項目としては、例えば、駆動モーターとガソリンエンジンで駆動する発電機の出力をどのように組み合わせるか、回生ブレーキシステムをどのタイミングで起動するか、どの程度のエネルギーを回収するか、などがある。
このスーパーバイザー用マイコンは、4個のマイコンの中で最も大型で、チップ面積の半分を3Mバイトのフラッシュメモリが占めている(図4)。またこのマイコンは、電動モーターの回転速度を下げて効率を高める制御も担う。他の3個のFreescale製マイコンは、それぞれ、駆動モーターと、ガソリンエンジンで駆動する発電機、プラネタリーギアセットを制御する役割を果たす。
この他にボルトに内蔵された電子回路は、ハイブリッド駆動システムにつながるものを除けば、最新の自動車一般にごくありふれたものだ(図5)。空冷式DC-DCコンバータは、TDKのボードとルネサス エレクトロニクスのマイコンを使用している。ドアや照明、カーナビ、オーディオといった標準的な車載システムを駆動する12Vの電源をオルタネーターに代わって作り出す他、12Vの補助バッテリーを充電する。
センタースタックを分解すると、通信モジュールのボードが露出した。このボードはLG製で、SpansionのフラッシュメモリとFreescaleのメモリコントローラが搭載されている。これらのインフォテインメント用ボードは実装密度が低くなっているが、これはScott-Thomas氏によると、所要の処理性能がそれほど高くないために、1個のチップに複数の機能を集約しているからだという。さらに、パネル前面に複数設けられた抵抗式タッチスイッチの間には互いに適当なスペースがあり、運転手が誤操作してしまうのを防いでいる。
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