タクシーをガソリン車から電気自動車(EV)に切り替えると、燃料代を約10分の1にまで低減できる。EVの普及に伴って、EVタクシーの導入事例が増えているものの、EVならではの課題がなかなか解決できない。日産自動車など5社は大阪府や京都府、京都市と協力して、実証実験を開始する。
都市内部を縦横に走り回るタクシー。加速・減速・停止が多く、燃費向上が難しい。タクシー事業の原価構成では、ガソリン代が占める比率が人件費に次いで高く、7.9%に上る*1)。加えて、エネルギー白書2011によれば、化石燃料の価格上昇は中長期的に避けられない。
*1) 国土交通省「自動車輸送事業経営指標」、2007年度
このような背景を考えれば、タクシーなどの短距離輸送用の商用車には、電気自動車(EV)が向いていることが分かる。
だが、ガソリン車を単に置き換えただけではEVタクシーの普及のペースは遅いだろう。ガソリン車の給油と比べて、EVの充電はまだまだ課題が残る。充電回数は給油回数よりも多く、時間がかかり、充電可能な場所も少ない。
タクシー事業では乗客を乗せている時間、すなわち実車率が下がる取り組みは導入しにくい。電池容量が下がってから慌てて充電するようでは乗客を逃がしてしまう。そこで、配車システムと充電予約システムなどを連動させて効率よくEVを動かす必要がある。
兼松とシステムオリジン、日産自動車、モーション、リサイクルワンの5社は、2012年1月25日、EVタクシー運行最適化システムの実証走行を開始すると発表した*2)。
*2) 環境省の「平成23年度地球温暖化対策技術開発等事業・EVタクシーの実用化促進と運用方法確立のための実証研究」に採択されたことを受けた実証実験である。
大阪府*3)と京都府、京都市の3自治体の他、タクシー事業者29社の協力を得た。試験期間は2012年1月30日から2月29日まで。大阪府と京都府で合計45台のEVタクシー(日産自動車の「リーフ」)の他、日産自動車以外のプラグインハイブリッド(PHV)タクシー25台が参加する*4)。
*3) 大阪府は2010年3月から世界初のEV用充電予約・認証システム「おおさか充電インフラネットワーク」を運用しており、今回の実証試験では急速充電器24台と連携させる。なお、2011年2月には「EVタクシープロジェクト」のために、日産自動車からEVタクシー50台の納車を受けている。
*4) PHVタクシーはEVではないため、後ほど紹介する距離計算機能や充電予約機能を備えていない。
今回のシステムでは一般的なスマートフォンやタブレット端末からEVタクシーを呼び出す機能が特長だ。端末を所有していないユーザーのために、京都府内に9カ所、大阪府内に7カ所のEVタクシー呼び出し端末も設置する。
EVタクシーに対する5社の問題意識は2点にまとめられる。1つは、航続距離に制約があり、LPG(液化天然ガス)車と同等の流し走行が困難であること、次に充電や充電待ちに要する時間のロスだ。問題解決策の実効性を確認するのが、今回の実証試験の目的である。
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