パナソニックの新構造SiC-MOSFET、SiCインバータの部品数/サイズ/コストを半減

» 2011年12月19日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 パナソニックは2011年12月19日、素子内部の寄生ダイオードを還流ダイオードとして利用可能なノーマリーオフ型のSiC(シリコンカーバイド)-MOSFETを開発したと発表した。同社は「世界初の事例」としている。これまでのSiCデバイスを用いたインバータ(以下、SiCインバータ)は、スイッチング素子であるSiC-MOSFETと還流ダイオードであるSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)、それぞれを個別部品として用意する必要があった。パナソニックが開発したSiC-MOSFETは、従来は外付け部品として用意する必要のあった還流ダイオードの替わりに素子内部の寄生ダイオードを利用できるので、SiCインバータの部品点数とモジュールサイズを半減できる。さらに、高価なSiCウエハーを用いるSiCデバイスの使用個数を半減できるので低コスト化も図れるという。

 MOSFETはその構造上、シリコンベースであれSiCベースであれ、チャネル層のソースからドレインに向かって寄生(ボディ)ダイオードを有している。既存のSiC-MOSFETの場合、この寄生ダイオードの順方向電流(MOSFETの逆方向電流)の立ち上がり電圧が約2.5Vと高いため、外付けダイオードの機能を代替することはできなかった。

 これに対してパナソニックは、SiC-MOSFETのチャネル層向けに開発した、高濃度エピタキシャル層の薄膜を成長させる技術を応用することにより、約0.5Vの立ち上がり電圧特性を有するMOSFETの逆方向電流(寄生ダイオードの順方向電流)をこのチャネル層に流せることを発見した。一方、MOSFETの逆方向電流の立ち上がり電圧を下げるとSiC-MOSFETの閾(しきい)値電圧が低下してしまい、ノーマリーオフ特性が得られなくなる。この問題に対しては、閾値電圧が約2.8V、MOSFETの逆方向電流の立ち上がり電圧が約0.5Vという状態を同時に実現できるように、薄膜/高濃度のチャネル層と高濃度ボディ領域(チャネル層下部の領域)の最適な組み合わせを見いだすことで対処した。具体的には、標準的な設計に比べてチャネル層の濃度を約200倍、厚みを約1/3、ボディ領域の濃度を約10倍にした。

 なお、この開発成果は、「IEDM 2011(2011 IEEE International Electron Devices Meeting)」(2011年12月5〜7日、米国ワシントンD.C.)で発表された。

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