内部抵抗が小さく、寿命が長いというキャパシタの性質は、エネルギー回生に適している(図3)。これまでは、工場内の搬送車やフォークリフトなど運転、停止が多い特殊な車両や位置エネルギーが変動する港湾用クレーン、その他、鉄道などに広く使われてきた。
内部抵抗が小さく、大電流を短い時間に取り出すことができるという性質は、無停電電源装置にも向く。半導体製造工場では数ms以上、電圧低下が続くと製造ライン上の仕掛かり品が損なわれてしまう。大電流が必要で、ごく短い時間だけ電圧を維持できればよいという用途にはキャパシタが最適だ。
しかし、大容量キャパシタはこれまで乗用車へは、採用されていなかった。ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)では装置が軽くなければならず、大量の電力を蓄える必要がある。つまり重量エネルギー密度や体積エネルギー密度が高くなくてはいけない。
キャパシタの性能はこの点微妙だ。「ニッケル水素二次電池とはほぼ同等のエネルギー密度が達成できている。安全性や価格を理由としてニッケル水素二次電池を使うEVであれば、大容量キャパシタでの置き換えに意味がある」(大手キャパシタメーカー)。だが、キャパシタのエネルギー密度はリチウムイオン二次電池よりは明らかに低い。
今回、電気二重層キャパシタが採用された理由の1つは、自動車メーカーがガソリン車の燃費改善になりふり構っていられなくなったことだろう。
米国、欧州、日本とも将来の燃費規制は厳しくなる一方であり、消費者も燃費を重視している。このため、エネルギー回生という用途ではリチウムイオン二次電池よりも有効なキャパシタが採用されたと考えられる。「1990年当時から乗用車が最終的な応用分野だと考えて製品化を進めてきた。他の用途でキャパシタの技術が成熟し、量産が進んだことで、今回の採用につながったと考えている」(日本ケミコン)。
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