Boschは2011年の売上高で500億ユーロを達成へ、多様化するパワートレイン技術への対応を加速

» 2011年07月15日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 ボッシュは2011年7月14日、東京都内で記者会見を開き、親会社であるRobert Boschの2010年の業績と2011年の業績予測を発表した。

 Boschの2010年の業績は、売上高が前年比24%増の473億ユーロ、税引き前利益は前年が12億ユーロの赤字であったのに対して35億ユーロの黒字となった。ボッシュ社長の織田秀明氏(図1)は、「リーマンショック後の2009年が厳しい業績となったのに対して、Boschグループ一丸となって業績回復に努めた。その結果、125年のBoschの歴史の中でも、最大の前年比売上高成長率を達成することができた」と語る。


図1 ボッシュの織田秀明氏 図1 ボッシュの織田秀明氏 

 この成長をけん引したのが、車載システムを中心とする自動車機器テクノロジー事業である。同事業は、売上高が前年比29%増の281億ユーロ、税引き前利益は前年が5億ユーロの赤字であったのに対して23億ユーロの黒字となった。売上高の伸びについては、Bosch全体の地域別売上高でみた場合に、前年比43%増となる110億ユーロを記録したアジア太平洋地域の成長が大きな役割を果たした。Boschの全売上高に対する同地域の構成比は2010年で23%に拡大しており、「2011年には30%を占めるようになる」(織田氏)見込みだ。一方、欧州、米国、日本などの先進国でも、ガソリンエンジンのダウンサイジング需要の拡大、ディーゼルエンジン搭載比率のさらなる増加、横滑り防止装置(ESC)の搭載義務化などの要因によって、一定の成長を確保できた。利益面では、売上高の増加以外に、利益率の低い製品の整理/統合を進めたことでも大きな効果が得られた。

 Boschは、2011年の売上高を500億ユーロ以上と見込んでいる。税引き前利益は、売上高の7〜8%が目標である。すでに、2011年1〜3月期の売上高は、前年同期比で15%増となるなど好調な滑り出しを見せているという。なお、最も好調な事業は、太陽光発電システムを扱う子会社のaleo solarなどが属する産業機器テクノロジーである。また、従業員数は、前年比で1万5000人増加して30万人に達する計画である。

 日本法人であるボッシュの2010年の業績も大きな躍進を見せた。売上高が前年比37%増の3300億円、税引き前利益は前年が2億円の赤字であったのに対して190億円の黒字となった。ただし、2011年の売上高見込みについては、前年と同じ3300億円に据え置いている。織田氏は、「東日本大震災の発生前まで、売上高は前年比10%増で推移していた。しかし、震災発生後の3月と4月は前年比20%〜40%減に落ち込んだ。現時点において、日本法人の主力製品であるディーゼルシステムはかなり回復しているものの、ブレーキシステムは前年より4〜7%ほど落ち込んだ状態にある。さらに、今後期待される車載システムの急激な需要回復による伸びもあれば、円高による下振れもあるので、2011年の業績の予測は難しい」としている。

図2 Boschの車両販売台数予測のパワートレインによる内訳 図2 Boschの車両販売台数予測のパワートレインによる内訳 

 Boschの成長戦略の中で重要な役割を果たしているのが、多様なパワートレイン技術の開発である。同社は、2020年の全世界の車両販売台数(車両重量6トン以下)を1億400万台と予測している(図2)。これらのうち、ハイブリッド車(HEV)が600万台、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の合計が300万台を占める。残りは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関車である。

 織田氏は、「例えば、直噴タイプのガソリンエンジンの搭載車台数は、2013年には2010年比で3倍となる720万台に増える。また、アイドリングストップシステムの搭載車台数も、2011年は前年比2倍の260万台となる。Boschでは、これら内燃機関の燃費を低減する技術の事業展開に注力している。もちろん、EVやHEVに必要な各種電動システムの開発も行っており、EVやPHEVが市場の中核を占めるようになる将来の自動車市場で重要な役割を果たすための準備も怠りなく進めている」と説明する。現在、Boschの電動システム製品としては、モーター、インバータ、電動システム向けのECU(電子制御ユニット)以外に、車載充電器や充電スタンド、回生ブレーキシステム、Samsung SDIと合弁で設立したSB LiMotiveが提供するリチウムイオン電池などがある。

 2020年のEV/PHEVの販売台数が300万台というBoschの予測は、ほかの業界団体や調査企業による1000万台という予測と比べるとかなり控えめなものとなっている。同社は、2020年におけるEVの製造コストを、内燃機関車と比べて45%高い1万6000ユーロと予測している。このコスト増の原因は、6000ユーロに達する2次電池である(図3)。このように、2020年時点でも2次電池の低コスト化が果たせないであろうという予測を基に、大容量の2次電池を搭載する必要のあるEV/PHEVの販売台数を少なめに想定しているようだ。

図3 2020年におけるEVの製造コスト 図3 2020年におけるEVの製造コスト

(朴 尚洙)

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