複数のビルの消費電力をまとめて管理するには、日本IBMの事例から学ぶスマートグリッド(2/3 ページ)

» 2011年07月11日 11時40分 公開
[畑陽一郎@IT MONOist]

二酸化炭素削減にも役立てる

 電力だけではなく、さまざまな環境センサーからデータを取り込み、管理者層向けのダッシュボード表示を可能にするシステムも構築した。

ALT 図3 統合管理ダッシュボードの構成図 システム全体を5階層として設計した。物理階層(センサー)とコントロール階層(制御システム)、データ階層(デマンド管理、アラート、スケジュール管理)はBEMSの一部分である。この部分は協業する各企業が担当した。日本IBMは、オペレーション階層(統合管理によるエネルギーと資産、投資の最適化)とビジネス階層(二酸化炭素排出量削減計画とビジネス視点での最適化判断)を設計、開発した。

 二酸化炭素マネジメント用のシステムの例を図3に示す。他の用途に向けたシステムでも構成はほぼ同じである。システムは5つの階層からなり、BEMSを構成する下位の3階層は協業会社が設計製造し、日本IBMは上位の2階層、すなわち統合データベースを含む管理ダッシュボードと、マネジメント層向けの実装を担った。

 統合管理ダッシュボードは、3つの要素からなる。階層別見える化(IBM Cognos Business Intelligence、図4)、リアルタイム分析と予測管理(IBM SPSS Statistics、図5)、統合資産管理(IBM Maximo Asset Management、図6)だ。

ALT 図4 Cognosを使ったダッシュボードの例 ビル単位で二酸化炭素排出量を消費電力とあわせて一覧表示する。ドリルダウン表示を選ぶことで、さらに細かい部署単位の状況を把握できる。
ALT 図5 SPSSを使った消費電力予測例 SPSSで作り上げた予測モデルを示した。中央のウィンドウでは、日本IBM本社の10年分の消費電力データ(青色のグラフ)と予測値(赤色のグラフ)を重ねて表示している。CognosとSPSSを組み合わせることで、過去の二酸化炭素排出量と将来の予測値を結合してリポート表示することも可能だ。なお、後ほど紹介する「IBM Intelligent Building Management V1.1」にはSPSSが含まれていない。
ALT 図6 Maximoを使った熱分布マップ例 データセンター向けのソフトウェアを利用した。

 なお、米IBMでは2010年初頭から同年9月までにニューヨーク州アーモンクの施設とミネソタ州ロチェスターの施設で同様の取り組みを進めてきた。ロチェスターの事例では33棟のビルなどを統合してエネルギー管理している。

管理ソリューションをパッケージ化

 米IBMと日本IBMは、ビルの消費エネルギーと運用データをリアルタイムに収集、分析して、ビル全体のエネルギーとビル内で作動している設備の使用効率を最適化する試みを続けてきた。

 2011年6月、これらの目的のために必要なソフトウェア群を仮想マシン化した*3)「IBM Intelligent Building Management V1.1」の出荷を日本IBMが開始した(図7)。価格は、建物の総面積10万m2当たり2808万円(税別)である。

*3)VMware ESXサーバのディプロイイメージであり、10個の仮想マシンからなる。各仮想ハードウェアの典型的な構成は、2コアのプロセッサ、4〜8Gバイトの主記憶、60〜100GバイトのHDDである。各仮想マシンでは、64ビット版(一部32ビット版)のSUSE Linux Enterprise 11上で、MaximoやNetcool、Cognosなどのソフトウェアが動作している。

ALT 図7 IBM Intelligent Building Managementの機能アーキテクチャ 日本IBMの事例を紹介した図3と類似した構造を採る。データ収集インタフェースよりも下の部分は協業するパートナー各社の製品を使う。空色で塗られた枠内の個々の製品は2011年6月以前に日本IBMが出荷済みであり、IBM Intelligent Building Managementは個別の製品を組み合わせて提供する形を採る。

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