部品や成形品などが含有する化学物質情報を管理し、サプライチェーン間の情報伝達を円滑にすることを目的に2006年に設立されたJAMP。現在、400社近い会員数を持つ同団体の総会と併せ、シンポジウムが開催された。本稿では当日の模様をお伝えする。
日本アーティクルマネジメント協会(JAMP)は2011年5月25日、経団連会館でシンポジウムを開催した。本稿ではその模様を紹介する。本シンポジウムは、JAMP会員による総会と併せて実施されたもので、非会員にも公開する形式で行われた。
基調講演では、世界の化学物質規制の動向とわが国の今後の化学物質政策の見通し・戦略をテーマに、経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 河本光明課長が登壇した。
現在、日本国内の化学物質管理に関しては2011年4月1日付けで化学物質審査規制法(化審法)の第1段改正が執行されており、新規物質だけでなく既存の化学物質についても規制の対象とすることとなっている。
今後の化学物質管理規制とリスク評価の指標など、国内の今後の運用方針については、改正化審法を基本に運用していく一方で、全てを科学物質のリスク評価方法については関連省庁と協議して決定していくとしている。リスク評価については「恐らくは有害性と曝露(ばくろ)量を掛け合わせて評価することになる」(河本氏)との見通しを示した(曝露量:物質の含有量とほぼ同義)。
一方、より高い化学物質管理を要求するEUでは「No Data, No Market」の思想に基づき、輸入品に対してリスク評価を求めており、日本の改正化審法よりもより厳しい内容となっている。
河本氏によると「REACH規制は、単なる法規制というよりも、規制をフックとした研究開発促進をねらう視点(グリーンイノベーション)が盛り込まれている」という。この傾向がさらに顕著なのが米国の動向だそうで、環境保護庁(EPA)による有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)があるが、現在、改正法案が上院で審議されるところだ。改正TSCA法は「まだ審議中なので確定した内容ではないが、同様にグリーンイノベーションの視点が明確に盛り込まれた内容になるだろう」(河本氏)との見方を示した。日本を含め世界的に「化学物質規制に対応した素材開発などを推進していくことになる」(河本氏)というのが今後のトレンドとなるだろう。
JAMPの中長期的な活動方針について語った運営副委員長である永守幸人氏は、2013年ごろをめどに、国内の特に中小企業への普及と国際展開、リスク管理情報(用途情報)の取り込み、2020年には化学物質情報の管理だけでなく周辺の、例えばCO2排出量や生物多様性に関連する情報も一括して取り扱える体制にしていきたいとの見解を示した(下図)。周知のようにサプライチェーン全体で化学物質管理をスムーズに実施するには、川上・川下企業だけでなく、中間の部品メーカー各社が同じ基盤上で情報を流通させる必要がある。現段階で、JAMP会員になっている企業は、素材メーカーや完成品メーカーなどが多く、「川中」の中小企業のさらなる参加が期待されている。
永守氏の発表は、あくまでも今後の会員による議論を前提として提示された素案だ。今後、会員や委員会等で議論が進められることになるが示された案は、化学物質管理だけでなく、CO2排出量や用途情報など、既存JAMP基盤を活用してサプライチェーン間の各種情報伝達を簡便にしようという意欲的なものだ。
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