経営環境が悪化すると企業の製造拠点の海外移転(空洞化)への懸念が。それを乗り越えたシンガポール企業から学べることは?
この度、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)にてお亡くなりになられた方々、ご遺族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。また、全ての被災者の皆さまには心よりお見舞い申し上げます。
宮城県や岩手県、茨城県は私も中小企業さんを訪問しに何度も足を運ばせていただいた地域です。今はまだ新聞報道などで被災地の製造業がどうなっているかを聞きかじっているだけですが、事態がもう少し沈静化したら実際に現地周辺に伺ってみたいと思っています。
さて、
東日本大震災の影響を受けて、日本の製造業がどうなっていくのか?
ということに注目が集まっています。地震・津波による直接的な被害だけでなく、原発被災による電力供給減など、国内製造業はさまざまな問題・課題に直面しています。こうした経営環境の悪化を受けて、大企業による製造拠点の海外移転、すなわち「空洞化」の進展に対する懸念が高まっています。
実際、大震災以前でも、国内では大企業による海外生産展開が急ピッチで進んでいました(図1)。
大震災がこうした傾向に拍車を掛けることはあっても、その逆はないというのが素直な感想だと思います。今後、国内モノづくり中小企業は「製造業の空洞化」を今まで以上に深刻な経営課題として捉えていく必要があるのではないでしょうか。本連載第6回では国際化を推進し、空洞化を乗り越えたシンガポール企業の取り組みを紹介します。その上で、「モノづくり中小企業の視点」から上記の問題を考えていきたいと思います。
皆さんはシンガポールと聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。
金融・観光立国、製造業の空洞化
といった言葉を連想される方が多いのではないかと思います。シンガポール経済を周辺の東南アジア諸国との比較から概観してみましょう(図2)。
シンガポールは周辺諸国に比べて、人口ははるかに小さく、また1人当たりGDPは周辺諸国よりもはるかに高いことが分かります。こうしたデータを見ながら、
「シンガポールの製造業は空洞化している!!」
と言われると、「いかにもその通り」と考えてしまいます。しかし、本当にそうなのでしょうか。少し、シンガポールの過去と現在を見てみましょう。
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